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野球のぼせもんBACK NUMBER
ソフトバンクに出現「育成ドラフト10位の怪物」沖縄の無名選手が“最難関ソフトバンク先発投手枠”を勝ち取るまで「見たことない球」前田純24歳の衝撃
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田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph bySankei Shimbun
posted2025/04/01 06:00

ソフトバンクのプロ3年目、前田純。高校はベンチ外、ドラフト育成10位指名から、いかに出世したのか
オープン戦最終登板だった同19日の中日戦(みずほPayPayドーム)は6回6安打2四死球で走者を背負う場面が目立ったものの2失点にまとめた。この試合は本調子とは程遠かったが、それが逆に首脳陣の評価を高めた。倉野信次投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーターが「調子が悪い時にあれだけの投球ができるというのは僕にとっても収穫だった」と評すれば、小久保裕紀監督も「悪くても試合を作れたのは評価できますね」と頷く。そのうえで、この登板をもって開幕ローテ入りが正式に決まったのだった。
145kmなのに打てない…なぜ覚醒?
前田純は、打者を騙すストレートを投げることができる。
身長が189cmもある長身左腕だから剛腕に思われがちだが、ストレートの最速は145キロしか出ない。ほとんどが140キロ台前半だ。
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だけど打者は振り遅れる。ストレートが浮き上がって見えるのだという。それを数値化したのが「ホップ成分」だ。バックスピンがかかり落ちにくい球、いわゆる直球の伸びを示す指標として用いられ、MLBの平均が40cm台前半とされている中で前田純は60cm台を計測する。
その“魔球”こそ、どんでん返しの野球人生の源だ。
「小学生で野球を始めた時からプロを目指していました。実力はないけどプロに行こうと思ってやってきました」
それでも現実は、ベンチ入りすら叶わなかった。夢を口にすれば周りからはバカにされた。高校は沖縄の中部商。コーチには「不撓不屈」という言葉を授けられ、それに何度も勇気づけられたという。
野球人生の転機――それは前田の大学時代にあった。
〈つづく〉
