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「パパイヤ・ルール」はいつまで続く? 開幕戦で顕在化した、マクラーレンの強さの裏に潜むチームオーダーの危険性
posted2025/03/20 11:02

レース終盤までは1−2体制を堅持したノリス(左)とピアストリ。今季は同じ景色をよく見ることになるのかもしれない
text by

尾張正博Masahiro Owari
photograph by
McLaren Racing
マクラーレンのチームオーダーを巡って、メルボルンでさまざまな思惑が対立した。
2025年の開幕戦オーストラリアGPには、昨年コンストラクターズ選手権を制したマクラーレンが優勝候補の本命として乗り込んできた。そして予選では大方の予想通り、フロントロウを独占した。
予選後の会見ではチームオーダーに関する質問が相次いだ。1番手のタイムを残したランド・ノリスはこう語った。
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「当然、開幕前にチーム内でチームオーダーに関する議論があった。僕たちには明確なルールがある。接触しないようスペースを残していれば、たとえチームメート同士でもレースをしていいんだ。それは今年も変わりない」
2番手のオスカー・ピアストリも、ノリスの回答に同意した。
「僕もランドも同じくらい勝ちたいと思っている。お互いにスペースを残して戦う分には問題はないと思っている」
迎えた日曜日。アルバートパーク・サーキットは朝から雨となった。スタート前までに雨はほとんど上がったものの、路面は濡れたまま。マクラーレンはほかの多くのドライバーと同様、2人にインターミディエイト(雨用と晴れ用の中間)タイヤを履かせた。
見解が割れるチームオーダー
レースはピアストリがスタートで出遅れ、3番手に後退。しかし、17周目に2番手に上がると、その後もトップのノリスとの差を徐々に詰め、28周目にはついに1秒を切り、テール・トゥ・ノーズの戦いとなった。すると、ここでマクラーレンは2人のドライバーにチームオーダーを出す。
その理由をチーム代表のアンドレア・ステラ代表は、レース後に説明した。
「あのとき、われわれは想定していたよりも早く周回遅れを捉えようとしていた。しかし、コースはまだ完全には乾いておらず、路面コンディションは依然として難しかった。最新の天気予報を受け取っていたが、まだ流動的だった。だから、予報と周回遅れの追い越しのリスクが明確になるまで、チームメート同士のレースは一時的に中断することにした」