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「パパイヤ・ルール」はいつまで続く? 開幕戦で顕在化した、マクラーレンの強さの裏に潜むチームオーダーの危険性 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byMcLaren Racing

posted2025/03/20 11:02

「パパイヤ・ルール」はいつまで続く? 開幕戦で顕在化した、マクラーレンの強さの裏に潜むチームオーダーの危険性<Number Web> photograph by McLaren Racing

レース終盤までは1−2体制を堅持したノリス(左)とピアストリ。今季は同じ景色をよく見ることになるのかもしれない

 とはいえ、ピアストリの地元オーストラリアのメディアやファンたちはその決定に納得がいかない。なぜなら、オーストラリアはF1のチャンピオンを輩出しているものの、オーストラリア人ドライバーによる母国での優勝はまだないからだ。しかも、ピアストリはメルボルン出身。2番手を走行するオーストラリア人に念願の母国初優勝を期待するのも当然だった。

 天気回復の見込みがたち、かつ周回遅れが近づくと、マクラーレンはこのチームオーダーを解除する。そうなると、マクラーレンの判断を批判する立場の人々も出てくる。マクラーレンの本拠地にしてノリスの母国であるイギリスのメディアだ。

 マクラーレンは昨季コンストラクターズ選手権を制したものの、ドライバーズチャンピオンは逃した。その要因のひとつに挙げられたのが、「パパイヤ・ルール」だった。これは、接触しなければ、チームメート同士でも自由にレースしていいというルールで、1968年に初めてマシンのカラーリングに採用されたパパイヤオレンジにちなみ、マクラーレンではこれを「パパイヤ・ルール」と呼んでいる。それに基づき、昨季は2台を自由に戦わせた結果、ポイントが2人に分散し、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)からタイトルを奪うことができなかったと敗因を分析するイギリス・メディアは少なくない。

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 にもかかわらず、マクラーレンが新シーズンの開幕戦で再びパパイヤ・ルールを発動したことに、イギリスのメディアは不満顔だった。

 案の定、パパイヤ・ルールを発動して数周後、再び降り出した雨により、2台はコースオフ。ノリスはすぐにコースに復帰したが、ランオフエリアからなかなか脱出できなかったピアストリは大きく後退し、最終的に9位でフィニッシュした。

今シーズンの焦点となる可能性

 こうして2025年の開幕戦オーストラリアGPは、ノリスが制した。マクラーレンが開幕戦で勝利するのは2012年以来13年ぶり。さぞかしイギリス人が喜んでいるかと思いきや、じつはそうでもなかった。ピアストリに迫られていたノリスも、場合によってはコースオフして大幅に後退していた可能性があったからだ。

 ノリスがチャンピオンシップでトップに立つのは初めてのことだ。しかし、あるイギリス人ジャーナリストはこう言う。

「でも、パパイヤ・ルールがこれからも出されれば、ランドのチャンピオンシップリーダーは、これが最初で最後になるかもしれない」

 昨年より強くなっていることを印象づけた今回のマクラーレン圧勝劇。その一方で、2人のドライバーをコントロールすることもまた、比例するように難しくなったと言える。

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#ランド・ノリス
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