甲子園の風BACK NUMBER
「体は大きくなってしまいましたが」消えた“甲子園史上最高のセカンド”町田友潤34歳の児童福祉改革「髪型、服装、ネイル自由。残業ほぼなし」
posted2025/02/25 11:02

常葉菊川時代の町田友潤さん。センバツ優勝と夏準優勝を経験した名二塁手は今、児童福祉の道へと歩んでいる
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間淳Jun Aida
photograph by
Jun Aida
野球の学びを児童福祉に
常葉菊川高校で「甲子園史上最高のセカンド」と呼ばれた町田友潤さんは現在、起業して8年目を迎え、放課後等デイサービスと児童発達支援の事業所を計5か所運営している。スタッフは40人近くまで増え、事業所を利用する子どもたちは小学生から高校生まで計100人を超える。
大半の子どもたちは朝から学校へ行った後に、町田さんが運営する事業所に来る。春休みや夏休みといった長期休みは、朝から夕方まで事業所で過ごす子どもも多い。こうした児童福祉施設は、利用者が社会生活に必要となる食事や排泄、集団での生活などを身に付けられるようにサポートする役割を担う。ただ、町田さんは子どもたちに何かを教えるよりも、「心地良い居場所づくり」を大切にしている。
「子どもたちが毎日来たい、あすも来たいと思える事業所にすることが一番大事だと思っています。その上で、子どもたちが課題を克服するサポートをしていきます。私たちは魔法使いではないので、急激に何かを変えられるわけではありません。それぞれの子どもに合ったペースや方法で、少しずつ着実に前進する考え方で運営しています」
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子どもたちは、きょうできていたことが翌日にはできなくなるケースが珍しくない。だが、町田さんは決して焦らない。そこには、野球からの学びがある。
「子どもたちは失敗と成功を繰り返して、できることを増やしていきます。苦手なことを簡単にできるようにならないのは、障害のない子どもも大人の私たちも同じです。この考え方は野球ともつながっています。いきなり技術を習得できませんから」
福祉のネガティブなイメージを変えるために
スタッフや保護者と一丸となって子どもたちをサポートする体制を築いているところも、チームワークが重要な野球と通じる。町田さんの事業所では数か月に1回の頻度で保護者と面談の場を設け、それ以外にも家庭と密に連絡を取る。保護者の依頼を受けて学校に行くこともあり、事業所での子どもたちの様子を学校側と共有する時もある。町田さんは家庭、学校、児童福祉施設の連携が子どもたちの支援に不可欠と考えている。
一緒に働くスタッフとの関係性も深めてチーム力を高めている。