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「絶対に連敗は許されない」なぜ那須川天心の挑戦を受けた? “崖っぷち”34歳モロニー「井上尚弥と戦ったから今がある」「テンシンは経験が足りない」 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2025/02/21 17:01

「絶対に連敗は許されない」なぜ那須川天心の挑戦を受けた? “崖っぷち”34歳モロニー「井上尚弥と戦ったから今がある」「テンシンは経験が足りない」<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

2月24日、有明アリーナで那須川天心と対戦するジェーソン・モロニー(34歳)

 虎の子の世界タイトルを失い、“チャンピオン”から“コンテンダー”に戻ったモロニーがここで敵地でのリスキーな一戦を受けた理由も理解できる。サウスポーが苦手なわけでも、30代半ば近くなっても力が落ちたわけでもないと示したい。井上戦後の上昇機運はまだ途絶えたわけではなく、それをここで再び証明しなければいけない。そのためのベストの方法は、前戦を戦った日本に戻り、一部では武居以上のポテンシャルを持つと評価されている那須川を倒すことだったのだろう。

「天心のことは実はフロイド・メイウェザーとのエキシビションマッチまで知りませんでした。ただ、ボクサー転向後の戦いぶりを見ていれば、才能がある選手というのは一目瞭然です。スピードがあり、身体能力もあります。目もよく、ポテンシャルの高い選手ですね。とはいえ、天心はハイレベルの選手とはまだ一人も戦っていません。経験とは大事なもので、今の彼にはそれが絶対的に欠けているのです」

 その言葉からは、井上以外にもエマヌエル・ロドリゲス、サウル・サンチェス、アストン・パリクテといった強敵と戦って這い上がってきた男のプライドが滲んだ。

ボクサー人生の岐路に立つモロニー

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 相手のキャリア不足をアドバンテージにするべく、モロニーがどう仕掛けてくるかが注目される。武居戦での序盤の戦い方を反省したことで、開始ゴング直後から持ち前のフィジカルを生かした戦い方をする可能性が高い。那須川対策は明かしてくれなかったが、早い段階から眼が離せないバトルが続くのだろう。

「天心は世界ランクでも高位にランクされており、そんな彼に勝てば世界挑戦に大きく近づくのでしょう。ただ、今は他の世界王者のことは考えていません。頭にあるのは天心に勝つことだけ。負けは許されない。これまで以上にハードトレーニングを積み、多くの犠牲を払い、すべてをかけて臨みます。ここでの勝利の意味も、敗北の意味も、私は十分にわかっています。24日はベストのジェーソン・モロニーをお見せしますよ」

 ここで勝てば、今では世界4団体のすべての王座が集まる日本で世界再挑戦のチャンスが見えてくる。一方、負ければ井上戦後に生み出した勢いは完全に霧散し、モロニーのグロリアスロードの終焉が視界に入ってくる。この究極のクロスロードファイト(岐路で迎える戦い)の中で、豪州のナイスガイはどんな物語を紡いでくれるのか。

 予想は若さで上回る26歳の那須川が優位との声が多いものの、キャリアの集大成として臨んでくるベテランの意地から最後まで決して目を離すべきではない。

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