ボクシングPRESSBACK NUMBER
「絶対に連敗は許されない」なぜ那須川天心の挑戦を受けた? “崖っぷち”34歳モロニー「井上尚弥と戦ったから今がある」「テンシンは経験が足りない」
text by

杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2025/02/21 17:01

2月24日、有明アリーナで那須川天心と対戦するジェーソン・モロニー(34歳)
34歳になった現在に至るまで27勝(19KO)3敗。モロニーは強豪と戦い続け、時に敗戦も味わいながら、真の意味で世界レベルのボクサーとしての評価を確立するに至った。そんな好漢にも決して忘られない試合がある。2020年10月31日、ラスベガスでのMGMグランドで行った井上尚弥戦である。
当時バンタム級で無敵を誇っていた井上との対戦では2度のダウンを奪われ、7回KOでの完敗だった。モロニーもオールラウンドな選手だが、世界最高級の実力を持つ“モンスター”とはレベルが違った。ただ、そんな悔しい負けの後でも、意気消沈したわけではない。「パウンド・フォー・パウンド(PFP)・ランキングでも最強と思える選手との対戦は貴重な経験でした」と目を輝かせて振り返る。
「井上に関して最も印象に残っているのは、スピードに裏打ちされた爆発力です。ダメージを与えられたパンチは私には見えないパンチでした。ボクサーなら誰もが理解していることですが、“最も効くパンチ”とは“見えないパンチ”。井上はスピード、爆発力に定評がある選手ですが、効かされたパンチの威力は私の想定以上であり、驚かされたといって良いでしょう」
ADVERTISEMENT
井上へのKO負け後には勢いがなくなるボクサーも少なくないが、モロニーの「井上戦があるから今がある」という言葉は誇張ではない。
「もうサウスポー対策に不安はない」
“モンスター”戦後、明らかにより優れた選手に成長したモロニーは5連勝で世界奪取。井上がスーパーバンタム級に昇級した後、階級トップクラスの選手と評価された時期もあった。そんな実績があるからこそ、最新の武居戦で力が出せなかったことはなおさら苦い思い出になったようだ。
「言い訳はしたくないですが、サウスポーとの対戦はだいたい5年ぶりと久々でした。それに加え、武居は最初の3ラウンドは危険だから、序盤は注意深く戦うというプランも機能しなかったように思います。スロースタートを切ることで彼に自信を与え、リズムに乗せてしまい、流れを変えるのが難しくなってしまったのです。ただ、今戦に向けて十分な調整を行い、もうサウスポー対策にも不安はありません」