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ボクシングPRESSBACK NUMBER
那須川天心が“KOできない”批判に本音「掌を返すならいまだぞ、と」なぜ賛否両論を楽しめる? 世界王者・武居由樹との対戦は「いずれ必ず…」
posted2024/07/17 11:03
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
「もう、なんとでも言えって感じですね」
なんてタイムリーな!
6月下旬、待ち合わせ場所のカフェで那須川天心の姿を目の当たりにして、そう思わざるをえなかった。まるで現在のボクシング界での自分の立ち位置を暗示するかのように、エイリアンのTシャツを着ているではないか。
機先を制するかのごとく、天心は呟いた。
「僕、エイリアンになっていますよね」
強いメッセージを投げかけられている気がした。頷くと、天心は言葉を続けた。
「なんかもうね、那須川天心が踏み絵みたいになっていると思います」
江戸時代の“隠れキリシタン”ではないが、同意せざるをえない台詞だった。ボクサーとしての那須川天心を認めるかどうか――それは2024年の日本ボクシング界において、もっとも意見が割れるテーマになっているような気がしてならない。批判的な人々が指摘しやすい瑕疵は、3試合を終えていまだスッキリしたKO勝ちがない、という点だろうか(今年1月のルイス・ロブレス戦は相手の負傷棄権による3回終了時点でのTKO勝ちだった)。
天心は「もう、なんとでも言えって感じですね」と、どこか楽しげに開き直る。
「やっているのは自分なんで。そこに耳を傾けてもね。その人たちは僕の人生を保証してくれるわけではないので」
試合前にポーズをとるだけで、小言をもらうこともあった。キックボクサー時代と比べると、必要最小限に抑えたパフォーマンスだと思うが、それすら目くじらを立てられる状況だ。もちろん諸先輩方の意見には素直に耳を傾けるつもりだが、どんな逆風が吹こうと天心は意に介さない。
「さすがに最初の頃は『マジか?』みたいな気持ちも多少あったけど、自分がボクシングをやっていくにつれ、風向きが変わることはわかっていたので、何を言われようと全然気にならないですね。僕は周囲の意見ではなく、チームだったり、本当の身内が言ってくれる意見を信用します。キックボクサー時代にも同じようなことがありましたし」