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「ウルトラマンに憧れて」那須川天心が語った“ボクシングと社会貢献”「怖いスポーツだし残酷…でも人間ってものが詰め込まれている」
posted2025/02/11 11:00

HEROs AWARD 2024を受賞した那須川天心。ボクシングと社会貢献について語った
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Kiichi Matsumoto
那須川天心は子供の頃、ウルトラマンに憧れていた。
とにかく強くて、とにかくかっこよくて。ウルトラマンショーに連れていってもらい、見上げたヒーローに握手してもらった。ウルトラマンからパワーをもらった。いつか俺もそうなりたいって純粋にそう思った。
目指しているのは“リアルウルトラマン”なのかもしれない。
「敬語を使われなくなったら、勝ちだなって」
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キックボクシング時代に「天心ファミリープロジェクト」をピースプロジェクトと共同で立ち上げ、養護施設などで暮らす子供たちを試合に招待してきた。ボクシングに転向してからも変わらず続けている。ただ、子供たちにかっこいいと思われたいからやっているわけじゃない。
「キックボクシングもボクシングも、見ようによっては怖いスポーツだし、残酷。でも人間っていうものが詰め込まれているものだと思うんです。興味がないと見にいかないだろうし、実際に見ていろんな捉え方というか何か感じ取ってもらえたらなって。(子供たちには)いろんなカルチャーに触れてほしいと思うんですよ」
招待した子供たちと試合前に写真撮影をすることも恒例となっている。会って、触れ合うことで子供たちが何か感じるものがあればいいという思いからだ。試合前は戦いに集中するために外部との接触を極力避ける選手も少なくないなか、彼はいつも子供たちと一緒に笑顔で一枚のフレームに収まっている。
天心ファミリープロジェクトを含めた子供たちとの積極的な交流によって、子供のファンが多いのも特徴でもある。ボクシング会場でも「天心、頑張れ~」の子供たちの声がよく響く。
「自分に敬語を使う子なんてほとんどいないですからね(笑)。『天心、俺はねー』とか話しかけてきて、自分も『すげえいいじゃん』とか返して。敬語を使われなくなったら、そこでもう勝ちだなって思えます」
壁というものをつくらないというより、ナチュラルに壁がない。ゆえに彼の周りに自然と人が集まってくる。
とはいえ強くてかっこいいだけではウルトラマンにはなれない。人の心のどこかにいつもあるような存在。「御守りみたいに思ってもらえれば本当にうれしい」と那須川は語る。
昨年1月に発生した能登半島地震後のある日、卒業式を控える石川県立大聖寺高の学生からメッセージが届いた。那須川曰く「学生たちに元気がないので、生徒会主催の卒業祭に来ていただけませんか」との内容であった。震災にショックを受けている学生も多いと察し、トレーニングの合間を縫って学生たちのもとにサプライズで駆けつけた。
リモートでのメッセージでも良かったが、会うことにこだわったのは那須川だった。学生たちともコミュニケーションを取り、悩みを打ち明けられると自分なりの言葉で返した。また那須川は能登半島地震に個人で500万円、仲間たちと共同で1000万円と計1500万円を寄付で送っている。
「言うこと、書くことすべて本気で」
天心ファミリープロジェクトや地元・松戸のお祭り参加など人と触れ合う機会を多く持とうとする那須川のアクションは続く。