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「名古屋の自宅からワシントンに今すぐ来い、と…」ナショナルズ入団の小笠原慎之介「締切まで3時間」電撃決着の舞台裏「実は別の球団が…」 

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小西斗真

小西斗真Toma Konishi

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posted2025/02/14 17:00

「名古屋の自宅からワシントンに今すぐ来い、と…」ナショナルズ入団の小笠原慎之介「締切まで3時間」電撃決着の舞台裏「実は別の球団が…」<Number Web> photograph by KYODO

ナショナルズの一員としてメジャーで第一歩を踏み出す小笠原慎之介

 26日には帰国したほどの弾丸スケジュール。その3日後にはナゴヤ球場を訪れ、チームメートや球団に移籍を報告した。

「ドラゴンズには9年間お世話になりましたから。先輩はもちろん、後輩も含めて人に恵まれたなと。ナショナルズとこうして契約を結ぶまでに感じたのは、ああ、これは自分だけの夢じゃないんだなということでした。だからこそ、僕のことよりこれからもファンの皆様にはドラゴンズを応援していただきたいです」

ドミニカでの刺激的な経験

 小笠原にとってメジャーリーグは小学生のころからの夢だった。1997年生まれ。物心ついたころには、イチローや松井秀喜はもちろん、松坂大輔も海を渡っていた。すでに身近な存在だったのだ。

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 2019年オフには、ドミニカ共和国を旅した。「野球に追われず、野球を楽しむ」ラテンの神髄と、巨大なピラミッドであるメジャーリーグ機構で這い上がる厳しさを知った。

 2023年オフにはナ・リーグ優勝決定シリーズを現地で観戦した。心を捉えられたのは、同業の投手ではなく打者のカイル・シュワバー(フィリーズ)だった。ダイヤモンドバックスに敗れたものの、全7試合で5本塁打。前年のリーグ本塁打王で、その春に行われたWBCアメリカ代表の一員である。

投手なのに…シュワバーに心惹かれて

 もちろん存在は知っていたが、その打撃は異彩を放っている。小笠原が観戦した23年は、打率.197にして、タイトルをとった前年を上回るキャリアハイの47本塁打。リーグ最多の215もの三振をしているが、決して「三振か本塁打か」の粗いだけの打者ではない。126もの四球を選び、出塁率は.343。選球眼は一流である。

「三振か本塁打かあるいは四球か」

 1世紀以上の歴史をもつMLBにおいても「打率1割台で40本塁打、100打点以上」はオンリーワンである。小笠原の目には個性のかたまりに映った。そしてこんなすごい打者が1番を打っている国の野球に心が躍った。

「これぞ大リーグだと思いました。僕が投手だからとか関係ない。リスペクトしかありませんから」

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