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「タイガースで本当によかった」戦力外通告から4年…阪神“元ドラ1左腕”が選んだ意外な転身人生「藤浪晋太郎、青柳晃洋、岩崎優…今も切れない阪神の縁」
posted2025/02/14 11:09

2月21日で31歳になる横山雄哉。引退後も阪神の試合は欠かさずチェックしている「球児さんの監督、楽しみですね」
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栗田シメイShimei Kurita
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現役時代、横山雄哉の唯一の趣味だったのがアパレルのショップ巡りだった。
学生時代は地元・山形から東北の大都市・仙台まで出向き、古着屋を巡ることが息抜きとなっていた。プロ入り後は阪神タイガース時代の先輩であり、チーム内で“オシャレ番長”と呼ばれていた秋山拓巳らと大阪・堀江にあるショップに時間を見つけては足を運んでいた。いつか自身のブランドを立ち上げたい――プロ野球選手を辞めたからこそ、一層そんな思いを強くしていた。
早々に手を差し伸べる者もいた。阪神時代に同僚だった山本翔也に誘われ、何気なく参加した草野球には、偶然だがアパレルに従事する者が多かった。横山は目を輝かせながら服作りのイロハを尋ねていく。中でも奈良県・橿原市でアパレル会社を立ち上げ今年で11年目を迎えた杉本理さん(36歳)とはウマがあった。杉本さんが回顧する。
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「元プロ野球選手が草野球の試合でヘッドスライディングを連発するんです。一つのプレーに一喜一憂する。それだけで彼の人柄を物語っていた。明るくて人懐っこい性格で、本当に服が好きだとも伝わり、営業にも向いていると感じました。『そんなに服が好きならウチで働いてみないか』と声をかけるのに多くの時間は必要ありませんでした」
“元ドラ1のプロ野球選手”でも特別扱いしない
引退後、横山は阪神の球団職員として働いていた。転職により給与は下がることは把握していたが、一切の躊躇はなかった。
「お願いします。将来的には自分のブランドを立ち上げたいんです」
迎え入れた杉本さんは、横山を特別扱いするようなことはしなかった。デザインだけではなく、営業や出荷など日々の業務も行なうこと。空いた時間でブランド立ち上げの努力をするなら応援する。そんな条件をつけた。デザインや販売というきらびやかな部分だけではなく、流通や管理まで含めて知って欲しい。親心に近い感覚もあった。