イチ流に触れてBACK NUMBER
「まずは妻。あとは…」イチローさんが米国殿堂入り後に感謝した“2人の名前”「地球上の1人も想像していなかったでしょ」会見で見せた“イチローらしさ”
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byJIJI PRESS
posted2025/01/23 11:02
現地1月21日、米国野球殿堂入りを果たし会見を行ったイチローさん
「あくまでも今をどう生きるかということを」
「地球上の1人も想像していなかったでしょ」
01年のマリナーズデビュー当時、この殿堂入りを想像したかと問われた際に残した言葉。引退後も常にアクティブ、前を向き続けるイチローさんは自分なりの考えを明かした。
「選手としての評価、プロ野球選手の評価という意味では、これが最後。比べるものがない。これが最初で最も大きいもので、最後のものになる。これ以上はないし、この後ももちろんない。だから僕は別の、野球人として違う道をこれから進んでいきたいと思っています。もちろん(頂いた評価は)トップのものではあるんだけども、特殊なのは過去に対する称賛であるということ。これがポイントだと思います。今やっていることへの称賛ではなく、過去への称賛なので、あくまでも今をどう生きるかということを僕は考えていきたいと思います」
「チャレンジして負ける。それを糧に頑張る」
ADVERTISEMENT
常に前へと進むのが彼の野球観。引退後に本拠地T-Mobile Parkのフィールドで行う選手への実技指導、日本で高校生に向け発信することも、その思いは同じだ。
「マリナーズの選手と一緒に練習をして、フリオ(・ロドリゲス)と特に毎日キャッチボールをやって、遠投をやって、ときには一緒にノックを受けてスローイングをすることもある。コーチという立場ではないけれど、まだ技術を実際に見せることができる状態にある。それをキープすることで選手たちが見て理解できる。目で見て理解するのと耳で聞いたことを理解するのとでは全く次元が違う理解になるんですよね。それを彼らに僕ができるまで、僕が元気なうちはそれを続けたいと思っている。毎日やっていなかったら、ホームにチームが戻ってくる時だけやろうと思ってもできないです。続けていないとこれはできないことなので」
「日本の高校生たちとも交流がある。彼らにもプロの技術というのを間近で見せることはすごく重要なことで、それを引退してからやっている。やっぱり動けるうちはどこまでも続けたいし、これがいつできなくなるかというのも見定めたい。それが一つのサンプルになるんじゃないかっていうふうに思っています」
この取り組みも野球人として唯一無二。日米を通し、今を生きること――。イチローさんは次世代への金言も忘れなかった。
「メンタルを鍛えたいなら、厳しい道を選ぶ他ないんじゃないですかね。楽な方へ行くとメンタルは弱くなっていきます。技術的なこともそうですけどね。体が楽な方へいくと、体はなまけてダメになっていくのと同じようにメンタルもそうだと思います。楽な方、楽な方へ行けば当然弱くなっていくし、挫折を知らない、負けを知らないメンタリティーというのは、すごく弱いと思うので。チャレンジして負ける、その瞬間、負けるかもしれないけど、それを糧に頑張る。それを克服して築き上げるもんじゃないでしょうか。一つ二つの経験、少ない経験で強いメンタリティーを獲得できるということはないと思うんですよね。いかに厳しい道を選べるかということに尽きると思います」