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上原浩治から痛烈な打球、松井稼頭央から直球で奪三振…真剣に野球に励む小学生がMLB経験者二人の本気の指導から学んだ技術と心構えとは
posted2025/01/16 11:00
text by
林亮佑(Number編集部)Ryosuke Hayashi
photograph by
Yuki Suenaga
子どもたちの大きな拍手に包まれながら姿を現したのは、日米の野球界でその名を轟かせた2人のスター選手だった。2024年12月23日、明治神宮外苑室内球技場で「Number Sports Academy 上原浩治・松井稼頭央 野球教室 supported by ニップン」が開催された。対象となったのは、小学校5・6年生の男女29人。参加者の多くが将来の夢にプロ野球選手やメジャーリーガーを挙げ、教室が始まる前には自ら2人組を作ってキャッチボールをするなど、高いモチベーションをのぞかせた。開始時刻を迎えると、子どもたちのキラキラとした眼差しが上原と松井に注がれる。まずは座学が始まった。
「今はとにかく量を食べる! あと、できるだけ好き嫌いは無くしてほしいかな」
上原が食事の重要性を説くと、ピーマンが苦手だという松井も首を縦に振る。また、調子が悪い時のマインドセットや、同世代のライバルを持つことの重要性など、2人の経験をもとにアドバイスが語られた。
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30分の座学を終え、いよいよ実技指導がスタート。上原、松井とグータッチを交わし元気に挨拶をした子どもたちは、勢いよくウォーミングアップへと散っていった。ストレッチとダッシュを終え、最初の練習メニューはキャッチボール。バラついたボールを投げる子どもを見つけると、上原がすかさず声をかける。動きを交えながら丁寧な指導が行われた。続くノックでは、松井が現役時代さながらの華麗なフィールディングを披露。小手先でバウンドを合わせようとする子どもたちに対して、ボールの見方や正しい捕球姿勢の作り方を実演した。
コース別に分かれ、直接指導
キャッチボールとノックを終えると、続いてはコース別に分かれた練習へ。投手コースの13人はブルペンに移動して投球練習、野手コースの16名は普段から守っているポジションでの守備練習を行った。
「キャッチボールの延長だよ。相手の胸に向かって真っすぐ投げるように。肩の力は抜いて、おへその下に力を入れる」
投手コースでの上原による直接指導はわずかな時間だったが、その効果は絶大。見違えるように良くなったストレートに、子どもたちは驚きと手ごたえを感じていた。また、野手コースではハイレベルな技術論が展開。速い送球に必要となる「ステップワーク」について松井が語ると、子どもたちは真剣な面持ちで耳を傾けていた。
その後、全体が3グループに分かれて40分間のバッティング練習を実施。そして最後の20分では、野手コースは上原、投手コースは松井を相手に、実戦形式の対決が行われた。上原から痛烈なヒットを放ち、「名前を憶えておくぞ」と言われた田邊魁さん(6年)は「みんな上手くて、高いレベルで楽しかったです。(上原との対戦は)しっかり当てることを意識しました」と、笑顔で語ってくれた。また、参加者で唯一の女子となった堺田薫さん(6年)は「めっちゃ緊張しました。でも嬉しかったです」と、力強いストレートで三振を奪った松井との対戦を振り返ってくれた。
上原と松井が最後に語ったのは「基本練習の重要性」だった。キャッチボールからコントロールを意識していた上原。プロで一から守備を磨き上げた松井。投手、野手それぞれのプロフェッショナルによって、技術と心構えが授けられた。3時間超に及んだ夢のひと時を終え、帰路についた子どもたち。その手には上原と松井から渡された修了証が握られ、充実した表情を浮かべていた。憧れの舞台への道のりは、まだまだ長い。この教室で出会った同世代のライバルたちと競い合いながら、いつか日本を代表する選手へと成長を遂げてほしい。
(協力:ナガセケンコー株式会社)