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「神野は終わった」と言われても…箱根駅伝“3代目山の神”に新チームが“選手兼監督”オファーを出したワケ「もっと好記録の選手はいる。でも…」 

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泉秀一

泉秀一Hidekazu Izumi

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posted2025/01/08 17:01

「神野は終わった」と言われても…箱根駅伝“3代目山の神”に新チームが“選手兼監督”オファーを出したワケ「もっと好記録の選手はいる。でも…」<Number Web> photograph by AFLO

2023年大会(写真)をはじめ、2度のMGCではいずれも苦戦した神野大地。青学大時代「3代目・山の神」と呼ばれた男は、苦難のプロランナー生活をどう振り返るのだろう

「勝てなくても走る。逃げたくないから」

 それでも、神野は競技を続けた。というよりも、続けなければいけない気がした。

 メンタルの辛さはあるものの、決して身体を故障しているわけではない。そこで辞めてしまうと、自分の人生から逃げるように思えたからだ。

「結果が出ないとメンタルがしんどくて、頑張ろうと思っても、どんどん踏ん張れなくなっていきます。もうダメかもなと何度も思いました。だけど、続けるか辞めるか悩んでいる時点で、辞めるべきじゃない。心の奥底に、ここで辞めちゃいけない、という感覚が残っていました。だから、気持ちを戻すのに少し時間はかかりましたが、挑戦を続けることにしました」(神野)

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 走り続けた神野は、びわ湖毎日マラソン(2021年2月)の次に出場した防府読売マラソン(同12月)で初めて2時間10分を切り、パリ五輪選考会の出場権を獲得した。

 しかし、五輪の出場枠は3つしかない。選考会に61人が出場する中、ベストタイムで劣る神野が、大迫や鈴木と渡り合って上位に食い込める可能性は低かったのも事実だ。

「本音を言うと、パリの選考会が厳しいことはわかっていました。だから、防府からパリの選考会までは、理想と現実のギャップが苦しかった。ほとんど結果がわかっていながらも、理想を追わなきゃいけない、というような」(神野)

 加えて、パリ五輪選考会の1カ月前には股関節に違和感を覚え、全く練習ができない期間があった。客観的に見て、神野が選考会で上位に食い込む可能性はほとんどなかった。

 それでも神野にとっては、走り切ることに意味があった。チーム神野で棄権の可能性が議論にあがっても、神野は頑なに出場すると言い張った。

「本人も含めて、当時の状況を知るチーム神野の誰もがパリ五輪の出場権を獲得するのは厳しいとわかっていました。でも、本人は出ると頑なだった。その時は、無理にでも出場を辞めさせるべきではないかと考えた瞬間もありました。でも、今振り返るとこう思います。五輪の出場権どうこうではなく、“一度決めたらやり抜く”という神野の生き方へのこだわりだったんだろうなと」(高木)

【次ページ】 “プロランナー・神野大地”が伝えたこと

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