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「最も過小評価されているドライバー」に選ばれた角田裕毅のRB残留は是か否か? 来季のレッドブル移籍を妨げた「確証バイアス」の存在
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool
posted2024/12/27 11:03
明暗分かれた角田とローソン。レッドブルの判断は数年後のふたりの未来にどう影響するだろうか
そう考えると、リカルドの途中解雇は単なる成績不振というよりも、ローソンにシートを譲ることが目的だったのではないかと考えられる。というのも、後半戦に入るとペレスの不振は一層深刻になり、レッドブル首脳陣はリカルドに代わるドライバーを早急に準備せねばならない状況となっていたからだ。その候補としてローソンはRBに加わった。ところが角田は、コース上の戦いでローソンを上回った。予選成績では6戦すべてで上位を獲得し、レースの獲得ポイントではローソンの4点に対して8点を獲得した。
イギリスのインターネットメディア『The Race』に寄稿するジャーナリストのスコット・ミッチェル・マルムはこう語る。
「多くの読者からレッドブルのドライバー選考について疑問が寄せられ、私も何度かクリスチャン・ホーナー代表やヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)にインタビューを行った。その中で感じたことは、レッドブルの首脳陣のユウキに対する評価には“確証バイアス”がかかっていることだった」
見過ごされた角田の成長
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確証バイアスとは、自分の先入観や思い込みを肯定するために都合のいい情報のみを集めてしまう傾向のことだ。ミッチェルが感じた確証バイアスのひとつに、角田が自制心のないドライバーだという決めつけがあったという。確かに角田の無線での激しい口調は、たびたび問題視されてきた。それゆえ、レッドブル首脳陣はプレッシャーに晒されるトップチームでの角田の起用を疑問視し、ローソンの精神的な強さを優先したのではないかとミッチェルは分析する。
ただし、それはデビュー1〜2年目のこと。3年目から角田の態度は徐々に落ち着き、24年シーズンは本腰を入れて改善に取り組んでいた。もちろん、トップチームのドライバーになるためでもある。RBのレーシングディレクターを務めるアラン・パルメインはその変化を認めている。
「チームメンバー以外の人たちにとって、ユウキの無線はフラストレーションを爆発させる発言ばかりが記憶に残っていると思うが、いつもは本当に冷静にマシンの感触をフィードバックしているんだ。それには私も最初は驚いたよ。確かに彼はいまでも感情を露わにすることもあり、それが弱点であることは確かだが、ユウキはいいドライバーになるために懸命に感情をコントロールすることに取り組んでいる」