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「すごい貧血…原因は練習しすぎ」水泳・大橋悠依の運命を変えたドクターストップ「休むと“やる気がない”と言われ…」輝かしい金メダルに壮絶な過去
posted2024/12/20 11:03

10月18日、29歳の誕生日に引退会見を行った大橋悠依。会場ではバースデーケーキが用意されていた
text by

石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Naoki Morita/AFLO SPORT
「朝、ゆっくりと眠れることがすごく幸せなんです(笑)」
毎朝6時頃起床し、「寝ているのか起きているのか分からない状態で、急いで朝食をとって練習へ行っていました」という現役生活を終えた大橋の日常は、ここ数カ月で大きく変化した。
「たまに仕事との兼ね合いで朝が早いこともあるんですが、圧倒的にゆっくりと過ごせるようになりました」
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ラストレースとなった9月の国民スポーツ大会から約3カ月。そろそろ泳ぎたくてウズウズしているのではないかと思いきや、「まったくないです。寂しさもまったくありません! もうお腹いっぱいです!」とあっけらかんと笑う。
そうきっぱりと言い切るのは、21年におよんだ競技生活をまっとうできたという自信があるからだ。現役時代に比べると表情も穏やかな印象だ。
「競技をしていた頃は、次の試合に向けて、“やらなきゃいけない”とか、“どんな練習をやろうか”ということをいつも考えていたので、慢性的に不安を抱えていました。そもそも、私、心配性なので。現役から退いた今、あらためて、私って本当に四六時中、水泳のことを考えていたんだなと気づかされているところです」
東京五輪2冠など輝かしい経歴を持つ彼女だが、実は大学1年生の頃に、現役を続けられるかどうかを左右するほどの大きな転機を経験している。
東洋大時代、突然の不調に…
滋賀県彦根市で生まれた大橋は県内のスポーツ強豪校、草津東高へ進学。当時はまだ目立った成績を残せていなかったが、北島康介ら日本競泳界のトップ選手を育ててきた名将・平井伯昌コーチに見いだされ、2014年に東洋大学へ進学した。
日本代表を目指し、高校時代と比べると練習量は2倍になった。そんなハードなトレーニングをこなしていたある日のことだった。2015年3月初旬、大橋は突然、身体の不調を感じるようになった。