第101回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
〈城西大学〉「芦ノ湖で一番にテープを切る」5区起用濃厚の斎藤将也(3年)は、山上りで“真のエース”として覚醒する
posted2024/12/25 10:01
text by
加藤康博Yasuhiro Kato
photograph by
AFLO
5区で2大会連続して区間記録を樹立した山本唯翔(現・SUBARU)が卒業。城西大学は山の大エースが抜けて臨む箱根駅伝となるが、櫛部静二監督は「走力でも精神的な支柱という意味でも、今年もエースは盤石です。唯翔は抜けましたが、今回も5区はしっかり戦えると思います」と自信を示す。その視線の先にいるのは斎藤将也(3年)だ。指揮官にそう言わしめるだけでなく、本人も今回の箱根駅伝で評価をさらに高めるつもりでいる。
「いろいろな記事を見ると、自分のことは“日本人エース”と書かれていますが、今回の箱根駅伝では同じチームのヴィクター(・キムタイ/3年)より強さを見せて、真の“エース”になりたいと思っています」
1年時から2区を担ってきた逸材であり、11月23日に行われた2024八王子ロングディスタンス10000mで27分45秒12の日本選手の学生歴代10位となる記録を出した。これはキムタイのベストタイムに迫るものであり、エースとしての資質は十分に備えている。
福井県の敦賀気比高校出身。高校時代からインターハイ、全国高校駅伝など大きな舞台で走っていたものの、目立った戦績は残していない。しかし、櫛部監督は早くからその高い潜在能力を見抜いていた。
「欠点のないバランスの取れた選手です。4年間かけてしっかり強化すれば佐藤圭汰選手(駒澤大学3年)とも互角の勝負ができるはず」と事あるごとに口にしてきた。佐藤は高校時代に1500m、3000m、5000mで高校最高記録を樹立した超弩級のスター選手。そんな選手に比肩するというのだ。
成長をもたらしたふたつの要因
実際、斎藤は入学からの約2年半で大きく成長を遂げているが、そこには大きくふたつの要因がある。ひとつは本人の言葉にも出た同学年の留学生、キムタイの存在だ。お互いに負けず嫌いな性格で練習でも本気の競い合いになる場面が多く、大きな刺激となっているという。
「ヴィクターに勝てれば、他のどんな日本人選手にも勝てると思っています。そうした存在が身近にいることで練習の質が上がりますし、ひとりの選手としても負けたくないですね。ハイペースで走る持続力や余裕度の面でまだ少し差がありますが、その差も縮まってきていると思います」
もうひとつは城西大の特色でもある低酸素トレーニングだ。標高2,000〜2,800mの高地と同じ酸素濃度の環境を作り、その中で負荷の高いトレーニングを継続している。
「とてもキツいので、正直言ってあまり好きではないのですが、やれば強くなれるのは間違いないので頑張っています。監督はトレーニングの知識や経験も豊富ですし、データを計測しながら自分自身にあった方法で負荷をかけられるので、それも結果につながっていると思います」
11月の八王子ロングディスタンスでは、走る前に「27分50秒を切れるだけの練習はしているので自信はあります」と話していた。消化してきたトレーニングによる手応えと実際の結果が一致しているのは、計画的な強化が順調に進んでいる証だろう。