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「“なでしこ級才能”があっさり引退」「食べていけない職業と考える層も」“最高年俸約1000万円”の女子サッカー界…心理的な壁の内実
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阿部博一/小野ヒデコHirokazu Abe/Hideko Ono
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/12/13 11:04

若き才能が花開きつつある、なでしこジャパン。ただし国内女子サッカーを取り巻く待遇については、決して恵まれているわけではない
筏井選手は小学校からサッカーを始め、29歳でサッカー選手としては現役を引退し、フットサル選手に転向しました。
「定性的なスポーツ」というのは、競技スキルの向上や成長は自分で計算して起こせるものではなく、指導者やチームメイトによる数字では測れない環境要因が大きいということです。どのスポーツにおいてもその要因は少なからずあるなか、女子選手は特に“つながり”を重視する傾向があると言います。
「周りを見ていても、やりたいところでサッカーをする人が多いです。それが結果的にWEリーグだったりなでしこリーグだったりするので、プロリーグとアマチュアリーグの垣根を越えて選手が循環することも。WEリーグ引退後になでしこリーグでプレーをする人もいるのは、女子ならではかもしれません」
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そして経済面においては、女子選手のほとんどは仕事をしながらサッカーをしてきた背景があります。WEリーグでは現在最高年俸が1000万円前後のなか、「Jリーガーみたいに『稼ぐぞ』とギラギラしているWEリーガーはほとんど見たことがないですね。海外リーグを目指す人はまた別かもしれませんが」と筏井選手は語ります。
WEリーグの最高年俸は1000万円前後のなかで
お金ではなく、つながりややりがいに重きを置くのが女子選手の特徴であるため、Jリーガーのように現役時代の貯金で引退後に何か事業をしたり、誰かを雇ってビジネスを始めたりすることはかなり難しいのではと筏井選手は言います。
「その分、女子はより現役時代の経験を活かしていく必要があると思います。反対に、そうしていかないと引退後は厳しいと思います」
WEリーグはまだ歴史が浅く、プロサッカー選手を志す女性全員が「プロとはどういうものなのか」の明確なイメージを持っているとは言えないのではと思います。好きなサッカーができることを目的に置くか、世界で戦うことを目的に置くかでは、進む方向性が変わってきます。
