なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
「“なでしこ級才能”があっさり引退」「食べていけない職業と考える層も」“最高年俸約1000万円”の女子サッカー界…心理的な壁の内実
text by

阿部博一/小野ヒデコHirokazu Abe/Hideko Ono
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/12/13 11:04
若き才能が花開きつつある、なでしこジャパン。ただし国内女子サッカーを取り巻く待遇については、決して恵まれているわけではない
高校生と大学生のアスリート1360人(40競技)からの回答によると、「卒業後や将来のキャリア不安」について、不安を感じる男性が62%に対して女性は76%と、10%以上高い統計が出ています。
同団体代表の白木栄次さんは、女子学生が感じる不安の中身の一例をこう話します。
「大学卒業後も競技を続けたい気持ちがあるものの、現在のスポーツ界において、結婚、出産、育児というライフイベントを経験した女性アスリートがほとんどいない現実に不安を抱く声が寄せられています。また、『幼少の頃から競技ばかりで引退後のキャリアに自信がない』との声は男女共通してありますが、自己肯定感の低さは男性よりも女性アスリートのほうが顕著だと感じます」
スポーツ界はビジネス界よりも20~30年遅れている印象
ADVERTISEMENT
本業としては別に外資系コンサルティング会社に勤務する白木さん。社内では、女性管理職の比率を50%にする目標が掲げられていると話します。
「社会全体でも女性活躍推進が謳われ、ビジネス界でのキャリア環境は徐々に変化しつつあると感じています。でもスポーツ界のほうは、それよりも20~30年遅れている印象です。女性アスリートがキャリアに向き合える環境は必要だなと感じています」
プロへの道は、現役時も引退後のキャリア面でも、安定が保証されません。先ほどのデータは学生の声ですが、社会人になっても同じ感覚を持つ女性は少なくないと思います。物事をよりシビアに、より現実的に考えると、プロ選手になることのリスクを考えてしまうのかもしれません。これからの活躍が期待されていたり、あと一歩でA代表になれるポジションにいたりしても、あっさり現役引退をしてしまう女子サッカー選手を見かけることがあります。その背景には、心理的な壁がある可能性もあると考えられます。
心理的な壁を抱えながらもサッカーを職業にしている女子選手たちもいることは、留意すべき点だと思います。
女子選手が「プロになる」よりも重視しがちなこととは
「サッカーは定性的なスポーツ」と話してくれたのは、元なでしこリーガーで、現在はフットサル選手としてバルドラール浦安ラス・ボニータスに所属する筏井(いかだい)りさ選手です。

