第101回箱根駅伝(2025)BACK NUMBER
特等席で箱根駅伝を見続ける日本テレビ平川アナウンサーと蛯原アナウンサー。彼らが伝えたい、箱根駅伝中継の面白さと第101回大会の展望
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byShiro Miyake
posted2024/12/05 12:50
日本テレビ 平川健太郎アナウンサー(左)、蛯原哲アナウンサー
蛯原 逆に先輩に教えていただきたいのですが、放送センターで心がけるのはどんなことでしょうか。
平川 さっきも話したけど、仕切るのが仕事ですから。今日はみんなが気持ち良く仕事をしてくれたな、と思うことが出来ればそれで良いんです。
蛯原 マエストロ(指揮者)ですね。ちゃんとメモしておきます。
平川 ところで、今は温暖化が進んだでしょ。インナーウェアも昔と比べて良くなっている。でも、現場は相変わらず寒いの。
蛯原 安心して下さい。しっかり寒いです(笑)。あっ、ひとつ変わっていることを思い出しました。先輩、今の箱根駅伝には給水がありますよ。
平川 給水かあ。確かに、17年前には今の形式の給水はなかったね。
蛯原 また前回の話になりますけど、青学大の7区で山下悠河君が給水をしたんです。4年間一度も箱根駅伝を走れなかった選手が、笑って水を手渡したんですよ。走れなくて悔しいはずなのに、君はここで笑うのかと。そのシーンは『もうひとつの箱根駅伝』でも放送されたんですが、わずか50mしか走れない給水をわざわざご両親が福井から見に来てらした。で、最後に山下君は両親の元に行って泣いたんです。ああ、もう話しているだけで涙が出てきそう。そんな給水のドラマがありますよ。
箱根駅伝ならではの現場のドラマ
平川 走った選手もそうだけど、走れなかった選手にもドラマがある。箱根駅伝の魅力はまさにそういうところだろうね。大正時代からずっと学生たちが守ってきた大会だからこそ、私たちが変えちゃいけないものだと思います。お正月という季節もそうですけど、なにかこう初心に帰ることができるというか。学生たちの姿を見て、仲間のため、故郷のために頑張ることは素晴らしいな、といつも思います。
コースを歩いて改めて思うのは、本当に東海道がすごく魅力的だなということです。起伏に富んでいて、海から山へ景色も変わって美しい。それぞれの坂や橋にも物語があるので、そういったことにも放送で触れていきたいですね。
蛯原 始めに「温故知新」というテーマを掲げましたけど、今まで先輩方がつないできてくれたたすきを、まずはしっかり受け止めて、私たちが変えるというよりも、現場で生まれる新しい何かを、ちゃんと伝えられるようにしたいなと思います。
平川 スタジオに10年間いたので、当日の現場の空気を感じることが出来ませんでしたから、はたしてどんな言葉が出てくるのか……。私はね、選手たちがスタートして、日比谷通りにぶわっと集団が飛びだしてくる、あのシーンが大好きなんですよ。あれを間近に見たとき、どんな表現で伝えようとするのか、不安もあるけど楽しみでもありますね。
蛯原 先輩は久しぶりですけど、私は放送センター自体が初めてですから。スタジオで困ったら、すぐに1号車に中継をつなぎますからね。
平川 わかりました(笑)。次の第101回大会も、一緒に頑張りましょう。