メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「ショウヘイは簡潔な返答が多いからさ…」ドジャース番記者は大谷翔平をどう“攻略”した?「巨大な存在になったけど、普通の人間なんだ」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2024/11/09 11:00
大谷翔平を近くで見続けてきたドジャースの番記者が、激動の1年間を振り返った
――今季で最も印象に残っているプレー、ゲームを挙げるとすれば
JH 50-50を達成したゲーム(9月19日、マイアミでのマーリンズ戦)にはショウヘイの魅力が詰まっていたと思う。パワー、スピードに加え、本塁打以外にも複数の安打を放つ打撃力を示した。今季を通じて示してきた通り、ビッグモーメントを嗅ぎ分け、やり遂げる能力を示したのも特筆すべきことだった。あの日、試合前の時点でショウヘイが50-50に到達すると思っていたものはいなかっただろう。それが早い段階で盗塁を決め、本塁打を打ち、達成濃厚ムードになっていった。偉業達成もオンディマンドで可能だと周囲に感じさせるのは凄いことだし、あの試合はその顕著な例だった。
FA マイアミで50-50に到達したゲームだ。6打数6安打3本塁打10打点という打棒は、私がこれまでベースボールのフィールドで目撃した中で最もすごいパフォーマンスだった。本当にすさまじかったよ。
記者の心に響いた「Nope!」
――個人的に思い出深いやりとりは
JH 先ほども話したように、「ナーバスになっているか?」「Nope!」のやりとりはよく覚えている。ショウヘイはドジャースでプレーし、プレーオフ、ワールドシリーズに出るのが目標だと言い続けてきた。プレッシャーを感じているはずが、それよりもわくわくしているのが伝わってきた。短いやりとりではあったけれど、この時期のプレーにどうアプローチしているのかが感じられた。
FA ショウヘイとのやりとりは限られていたので、これというエピソードがあるわけではない。私個人というわけではないが、プレーオフ中、肩を脱臼直後にチームのグループチャットにメッセージを送ったといういう話は興味深かった。また、メディア対応の機会も増え、プレーオフ前に「ナーバスになっているか?」と聞かれて「Nope!」と答えたのも興味深かった。とてつもない選手で、巨大な存在になったけれど、普通の人間なんだと感じる瞬間というのは随所にあった。
――大谷はチームメイトたちに好意的に受け入れられていたように見えたが、その背景をどう考えるか
JH ショウヘイ自身がどうというより、爆発的な注目度を誇るショウヘイのチームメイトになることによる懸念はチームメイトの中に当初はあったのではないかと思う。春季キャンプには日本メディアだけではなく、アメリカメディアも含め、大量のレポーター、カメラマンが押し寄せた。チーム全体がこれまでとは違うスポットライトを浴びた。イッペイのスキャンダルによってさらに注目度が増した印象もあった。ただ、振り返ってみると、あのスキャンダルでイッペイがいなくなり、ショウヘイが自身でコーチやチームメイトに対処するようになったことがいい方に働いたのではないかと感じる。
また、チームメイトたちがショウヘイの日々の練習熱心さに感心させられているのも伝わってきた。あれだけのことをやる背後でしっかりと準備し、鍛錬している。選手たちは二刀流をこなすショウヘイがどれだけのハードワークをこなすかは想像していたと思うが、実際に日々目の当たりにし、同時にショウヘイがすごい結果を残すことで、クラブハウスでも信頼されるようになっていったのではないか。もともとドジャースには“勝利のカルチャー”があったことも手伝い、好意的に受け入れられるようになったように見えた。
FA 春に水原一平事件が起こり、ショウヘイは一時的にでも厳しい立場に置かれることになった。そういう状況になったことで、周囲の選手たちは彼をより身近に感じたのではないかと思う。特に発端は韓国での開幕シリーズ中に起こり、海外遠征中という偶然もあって、チーム全体がその渦中に置かれる結果になった。異国の地で起こったあの経験を通じて、ショウヘイと他の選手たちの間には結びつきが生まれたのかもしれない。