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「福島大の練習、エグイな…」男子選手も驚愕…なぜ“福島の国立大学”が女子スプリント界を席巻できた?「毎日がナショナルチーム合宿のようで」
posted2024/11/07 11:01
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph by
(L)Hideki Sugiyama、(R)AFLO
陸上競技では近年、用具の進化もあり「不滅」と言われた記録も次々に更新されている。そんな中で、今なお燦然と輝く記録もある。その1つが女子400mの日本記録だ。2008年に千葉麻美(旧姓・丹野)が樹立した51秒75は、16年もの月日が流れたいまも破られず、女子トラック種目においては最古の日本記録となっている。千葉にとって大きかったのが当時、最強を誇っていた福島大時代の経験だ。東北地方の国立大である同校が、なぜ日本の女子スプリント界を席巻するほどの成果を出せたのだろうか?《全3回の2回目/つづきを読む》
福島大に入学して早々、千葉麻美(旧姓・丹野)は、アジア・ジュニア選手権で女子400mの日本記録を打ち立てた。
大会開催地のマレーシアから川本和久監督に国際電話で報告をすると、快挙を手放しで喜んでくれたという。その一方で、練習をともにする先輩たちも「さぞ褒めてくれるだろう」と想像して福島に戻ると、意外なほど淡白な反応だったという。
「先輩方も日本記録をどんどん出していたので、『よかったね』ぐらいしか言われなかったんです(笑)。それで自分の中で火がつきました。まだ若かったので、先輩たちがびっくりするような記録を出さないとダメだなとすごく思った記憶があります」
日本記録が当たり前の環境。千葉はその仲間入りを果たしたものの、まだまだ一歩目を踏み出しただけに過ぎなかった。
「毎日がナショナルチームの合宿をしているよう」
当時の福島大は日本の女子ロングスプリント界を牽引する存在だったと言っていい。
「チームメイトは、仲間でありライバルでもあり、一瞬でも気を抜いたら順位が下になってしまう……。本当に毎日がナショナルチームの合宿をしているようでした」
それもそのはず。千葉が日本記録を樹立する約1週間前、2004年6月5日の日本選手権の女子400mは、千葉が優勝し、2位に久保倉里美、3位に木田真有と福島大勢が表彰台を独占した。そればかりか、5位に坂水千恵、7位に竹内昌子が入り、入賞者8人中なんと5人が福島大の選手だった。さらに翌日の400mハードルは福島大OGの吉田真希子と久保倉がワンツーフィニッシュしていた。