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野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
芸人→最弱プロレスラーの異色経歴で…なぜ下関に“ベイスターズの店”を? あるファンの数奇な人生「若い子は下関で生まれた球団だと知らないんです」
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph by(L)JIJI PRESS、(R)公式Xより引用
posted2024/10/30 17:05
ベイスターズの「故郷」下関出身のプロレスラー、ラブセクシー・ヤング(右)。98年の日本一の際、地元でのパレードを見て熱狂的ファンに
「ガラガラの外野席とかで観ていると、熟練のファンの方に声を掛けられるんですよね。大洋グッズをバチバチにまとったおじさんや、98年を生で観たことを雄弁に語るお兄さんとか。
僕からすれば憧れの人たちですから、『すごいっすね』って話を聞いているんですが、その人たちは僕が“下関の出身”とわかった途端に、目をキラッキラに輝かせて『君は下関なの!?』と身を乗り出してくるんです。それで、初めて知るんですね。何もないと思っていた下関を、ベイスターズの聖地として見てくれる人たちがたくさんいるってことを」
だが、あの優勝から時間が経つにつれて、下関からベイスターズのニオイは消えて行った。それはヤングが帰省する度に感じていたことでもあり、下関の町から「マルハ」の文字が消えていくと共に、町はどんどん活気をなくし、かつてのベイスターズファンは表通りにも姿を見せなくなった。
若い子は「下関で生まれた球団だと知らない」
毎年一度はやっていたオープン戦も2006年を最後に弱すぎて顔向けできなくなってしまったのか、すっかりと足が遠のいてしまった。その代わりに、隣県の人気球団カープやホークスのファンが勢いを増し、ホエールズ・ベイスターズのファンは「おじいちゃんの世代ね」と断じられる体たらく。
「ホエールズ発祥の地と言ってもね、小学生がマルハの工場見学で高木豊の下敷きを貰うだけじゃファンにはならないんですよ。大洋を、ベイスターズを身近に感じる機会がないと継続的にファンは続けられない。今の下関の若い子はDeNAが下関から生まれた球団だということも知らないんです。これは何とかしないといかん……と、ない頭をしぼって考えていたんです」
そんな時、下関にベイスターズが帰って来るというニュースが飛び込んできた。球団創設70周年にあたる2019年3月10日、DeNAとなったベイスターズが『70th ANNIVERSARY PROJECT』としてこの下関でオープン戦を行うことが決まったのだ。