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芸人→最弱プロレスラーの異色経歴で…なぜ下関に“ベイスターズの店”を? あるファンの数奇な人生「若い子は下関で生まれた球団だと知らないんです」 

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村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

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photograph by(L)JIJI PRESS、(R)公式Xより引用

posted2024/10/30 17:05

芸人→最弱プロレスラーの異色経歴で…なぜ下関に“ベイスターズの店”を? あるファンの数奇な人生「若い子は下関で生まれた球団だと知らないんです」<Number Web> photograph by (L)JIJI PRESS、(R)公式Xより引用

ベイスターズの「故郷」下関出身のプロレスラー、ラブセクシー・ヤング(右)。98年の日本一の際、地元でのパレードを見て熱狂的ファンに

 実に13年ぶりとなる下関開催。前日から多くのベイスターズファンが横浜から乗り込み、駅前商業施設では最後の下関開催があった2007年時の監督、大矢明彦さんを招いて前夜祭が行われるなど、大変な盛り上がりを見せた。

「ああ、この熱があれば下関のベイスターズ熱復興のきっかけになるのでは」と期待は膨らんだが、翌日は朝からクジラ1000頭が同時に潮を吹いたかのような土砂降りで即中止。早朝から駆け付けた南場智子オーナーや高田繁元GMなども中止を惜しんだが、ベイスターズの下関開催は幻となり、以来現在まで一軍戦は行われていない。

下関でベイスターズファンが集まれる場所を作りたい

「あの時、横浜から来たベイスターズファンの人たちと何人も仲良くなって、下関を大事にしてくれていることを改めて知ったんです。そこで目覚めてしまったところはありますね」

 下関に帰ってベイスターズファンが集まれる場所を作りたい。誰もやらないなら、俺がやるしかない。

「普通は居酒屋で言うだけ言って盛り上がる類の話。本当にやるやつはいないと思いますけど、バカだから本気になってしまって。最初に上田中町の『竹つぼ』さんに相談したんです。子どもの頃から食べに行っていましたし、下関の飲食業界の現状とかも聞きたかったんです」

 子どもの頃から知っているおじさんは、ヤングの「ベイスターズの聖地の灯を絶やしたくない」という熱い思いを聞くと、何かを感じたかのように深く頷き、店の裏から「これを持って行け」と、銅像と大きな旗を渡してくれた。

 旗には「マルハ」と書いてあった。そう。おじさんは、かつて大洋漁業の漁船に乗っていたのだ。この旗はその船に掲げてあった本物の大漁旗。そして、銅像は大洋ホエールズ球団を生んだ中部幾次郎氏の御姿だった。

「おまえのような若者が出てくるのを待っていた。下関にタイヨウを取り戻せ」

 タイヨウの勇者・ヤングは伝説の大漁旗と、この世に7つ散らばるという中部一族の銅像とを引き換えに、自分がもう元の世界に引き返せないことを悟った。

<後編につづく>

#2に続く
「多くの人からバカじゃねえかと言われましたけど…」“ベイスターズの故郷”山口県下関で「ファンのための豚丼屋」を開いた「ある熱狂的ファン」の話 

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