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「ネリは“過去最強の相手”だったのか?」井上尚弥の答えは…敗戦後にはメキシコの母に涙の電話「“悪童”は本気で怪物に勝とうとしていた」―2024年上半期読まれた記事
posted2024/09/20 06:00
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Naoki Fukuda
2024年の期間内(対象:2024年5月~2024年8月)まで、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。井上尚弥部門の第5位は、こちら!(初公開日 2024年5月8日/肩書などはすべて当時)。
元2階級制覇王者のルイス・ネリ(メキシコ)が5月6日、東京ドームでスーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)に6回1分22秒TKOで敗れた。2018年3月、WBCバンタム級王者として前王者だった山中慎介の挑戦を受け、計量失格という愚行により、日本で最も嫌われるボクサーとなって6年あまり。“悪童”はどのようにして戦い、そして敗れ去ったのだろうか――。
“悪童”ネリが井上尚弥から初ダウンを奪うまで
あのネリが日本に帰ってきた。対山中第1戦後のドーピング違反、そして第2戦での計量失格。山中さんは「6年後にまさかネリが東京ドームで試合をするなんて。僕との2試合があるからネリが井上選手の相手になったと考えると、本当に不思議ですよね」と複雑な表情を浮かべたものだ。
“悪童”と呼ばれたネリにとって、今回の試合は日本でのリベンジマッチだった。山中さんとの2試合は確かに勝利している。ただし、計量失格、王座はく奪は負けに等しい失態であり、ネリにとって今回の試合には日本における“汚名返上”という意味合いがあった。
そして何より、4団体統一王者である井上に挑戦できることがモチベーションだった。ファイトマネーは過去最高と見られ、つまりはチャンピオンとして迎えた試合よりも挑戦者である今回のほうが高額ということ。来日後、公開練習の際にネリは次のように語っている。
「パウンド・フォー・パウンドのナンバーワンを決めるような戦いを見てほしい。そして4団体統一を成し遂げたい」
“モンスター”井上に勝利して世界のスーパースターになる。そんなネリの決意が初回に表われた。“パンテラ(ヒョウ)”ネリの強みは打ち出すと止まらない連打だ。荒っぽい攻撃を売りにしながら、意外と近い距離でも強いパンチが打てる。ゴングが鳴ると、いきなり連打で仕掛けようとしたシーンはいなされて終わったが、開始1分40秒、近距離で放った左フックがヒット。井上をキャンバスに突き落とし、東京ドームを凍りつかせた。