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大社の大応援…体感した早稲田実ナインの証言「勝っているのに勝っていないような」“あの9回裏”現地で何があったのか?「馬庭優太の衝撃」《2024甲子園BEST》

posted2024/08/30 11:00

 
大社の大応援…体感した早稲田実ナインの証言「勝っているのに勝っていないような」“あの9回裏”現地で何があったのか?「馬庭優太の衝撃」《2024甲子園BEST》<Number Web> photograph by JIJI PRESS

タイブレークの延長11回裏。サヨナラ打を放った大社エースの馬庭優太(左)。手前はしゃがみこむ早稲田実2番手・川上

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中村計

中村計Kei Nakamura

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JIJI PRESS

 京都国際高校の初優勝で幕を閉じた夏の甲子園。今年も多くのチームが強い印象を残していきました。これまでNumberWebで公開された今夏の甲子園に関する記事の中で、特に人気の高かった記事を再公開します。今回は、大会随一の名勝負とも呼ばれた大社vs早実の一戦レポートです。《初公開:2024年8月18日/肩書などはすべて当時》

 スタンドのざわめきが収まらない。レフトの選手交代がアナウンスされた直後、早稲田実業(以下、早実)の内野手が5人に増えていたからだ。試合が再開すると、球場は状況を理解し、ざわめきはどよめきに変わった。

 内野手5人シフト。外野は2人で守るという捨て身の作戦だった。

あの5人シフト…当事者たちの証言

 作戦を指示した監督の和泉実が振り返る。

「絶対、スクイズでサヨナラをねらってくると思ったので、スクイズだけはさせまい、と。(5人シフトは)練習ではやってたんですけど、試合でやったのは練習試合も含めて初めてでしたね」

 9回裏、土壇場で大社に2−2の同点に追いつかれ、なおも1アウト二、三塁と攻め立てられた。

 交代した1年生の西村悟志は「レフト」として出場したが、本職は内野手だ。西村は投手と三塁手の間、かつ投手よりもかなり前に守った。打者との距離は十数メートルしかない。

「打ってくることも考えていました。自分がやるしかないと思っていたので、マイナスなことは考えずに自分ならできると信じてプレーをしました」

 大社ベンチはこの場面で、ヒッティングできた。その打球はワンバウンドで西村のグラブに収まる。西村が一塁に送球し、まずは2アウト。それを見て、大社の三塁走者が本塁をねらったが、一塁手・國光翔が間一髪のタイミングでアウトにし、記録上「レフトゴロ」のダブルプレーを完成させた。

9回裏のミス「勝っていないような気分」

 今年は甲子園ができて100年目の年だが、内野手5人シフトを敷き、しかも交代した5人目の内野手の所に打球が飛び、しかも併殺に仕留めたことなど史上、初めてのことだったのではないか。

 和泉が感慨深げに語る。

「うちのチームは予選でも9点勝っていて追いつかれたりしたんです。ダメなところがたくさんあるのに、そのままこけないで切り替えられた。だから今、ここにいるんですよ」

 実は直前に「ダメなところ」を露呈していた。

 1点リードで迎えた9回裏、大社の先頭打者の打球は平凡な二塁ゴロだった。しかし、二塁手の内囿光太の悪送球で、いきなり二塁まで進塁を許してしまった。

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