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「日本の水泳界を変えるきっかけに」…なぜ高校トップスイマーが続々“名門海外大”へ? パリ五輪“メダル1個”だった競泳界に「新ムーブ」のワケ
posted2024/08/26 06:01
text by
田坂友暁Tomoaki Tasaka
photograph by
(L)川口浩輝/フォート・キシモト、(R)JIJI PRESS
パリ五輪の女子100mバタフライ7位入賞の平井瑞希がアメリカ・テネシー大学への進学を公表した。
他にもすでにジュニアの日本代表として活躍してきた岡留大和(東邦大東邦)はUCバークレー、全国大会で活躍していた平泳ぎの長岡豪(栄東)はスタンフォード大学への入学を決めている。
これまでほとんどなかった高校生の代表クラスによる海外大進学。なぜ彼らはこれまでなかった選択肢を選びはじめたのだろうか?
実は、理由は至極単純なことだ。端的に言えば「水泳と学業を高いレベルで両立したい」というだけだ。それを実現できる環境が、海外の大学であったというだけである。
なぜ日本で「文武両道」が成立しない?
日本でもそれが実現できないわけではない。
しかし、日本代表クラスの選手が日本の大学に進学して水泳を続けるとなると、周囲の環境が学業への集中を阻害する可能性が高いのは残念ながら事実である。
それは、どうしても水泳中心の生活になってしまうからだ。
たとえば合宿参加等は強制ではないが、大学側もその選手が競技で好成績を残すことを望んでおり、学業よりも遠征やレースへの参加が優先される可能性は高い。
さらに、日本の大学では学業において単位が取れなかったとしても競技に対するペナルティはない。むしろ競技での成績によって学業における単位取得が優遇される大学すらある。
平井、岡留、長岡らが進学する大学は、アメリカのNCAA(全米大学体育協会)に属する。
NCAAで定められた規定では、学業成績が不良であれば試合どころか練習にすら参加させてもらえない。1週間に行える練習時間も厳しく設定されており、大学の環境そのものが学業優先のシステムとなっている。スポーツ選手として大成することよりも、その先の社会で活躍できる人材になるための育成と学びを尊重してくれるのである。