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高校野球で「ジャイキリ」続出…なぜ今年は“おらが町のチーム”が勝てる? 石橋、大社、掛川西…「選手はほとんど地元出身」公立校が大健闘のワケ
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2024/08/16 17:01
初戦で報徳学園、2回戦で創成館と強豪私学を破ってベスト16入りを決めた大社。選手は地元・出雲市出身がほとんどだという
「監督としても甲子園に出られたことで、『やればできるんだ』という姿を見せることができ、胸がいっぱいです。多くの人たちに支えられ、応援され、いい仲間と出会い……本当に素晴らしいことだと思います」
夏の甲子園に初出場の石橋を率いる福田博之は、掛川西の大応援に「すごかった」と圧倒されていたという。そこで、「うちはどうなんだろう?」と少しだけ不安がよぎったと漏らすが、杞憂に終わった。
学校創立100周年の節目の年に野球部の新たな歴史を切り開いた石橋のアルプススタンドは、オレンジで埋め尽くされていた。その数、およそ3000人。聖和学園との初戦を勝利に導いた福田は、「大変な勇気と力をいただきました。本当に力になりましたね」と、大応援団に頭を下げていた。
県内屈指の進学校として知られる石橋も、野球部の伝統を甲子園へと繋げたチームだ。
20年秋に関東大会に出場したことで、「文武両道が可能になる」と期待を抱いた入江祥太ら現在の選手たちが入学し、23年のセンバツ、そしてこの夏の甲子園へと結実させた。福田がしみじみと語る。
「中学生が『あの学校に行きたいな』と思ってくれる風土を、先輩たちが作ってくれたのが大きいと思っています」
大社、掛川西、石橋。地元出身者が大半を占める公立校の躍進がクローズアップされるが、「地元の力」は私立も同じだ。
新潟産大附、小松大谷も…地元選手中心のチームが躍進
初出場ながら初戦で甲子園優勝経験のある花咲徳栄を撃破した新潟産大附は、「柏崎から甲子園に行こう」を合言葉に地元の選手を中心にチームを鍛え上げ、実績を作った。
明豊、大阪桐蔭と次々と強豪をなぎ倒して台風の目となっている小松大谷も、レギュラーメンバー全員が県内の中学出身である。監督の西野貴裕は、チームの結束力のひとつとしてこのことを挙げているくらいだ。
「小学校から一緒にやっている子ばかりなんで、顔見知りが多いんです。だから足並みを揃えられるんじゃないでしょうか」
古き良き高校野球の美徳。18年夏の金足農に誰もが釘付けとなったように、今でも心の奥底では「おらが町のチーム」を求めている。
だからこそ、この夏も彼らの野球に興奮し、大応援に胸が躍るのである。