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高校野球で「ジャイキリ」続出…なぜ今年は“おらが町のチーム”が勝てる? 石橋、大社、掛川西…「選手はほとんど地元出身」公立校が大健闘のワケ

posted2024/08/16 17:01

 
高校野球で「ジャイキリ」続出…なぜ今年は“おらが町のチーム”が勝てる? 石橋、大社、掛川西…「選手はほとんど地元出身」公立校が大健闘のワケ<Number Web> photograph by JIJI PRESS

初戦で報徳学園、2回戦で創成館と強豪私学を破ってベスト16入りを決めた大社。選手は地元・出雲市出身がほとんどだという

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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 歓喜に揺れる紫色のスタンドをめがけ、校歌を歌いあげた選手たちが勢いよく駆け出す。

 32年ぶりの夏。島根の大社は初戦で優勝候補の報徳学園を倒す金星を挙げると、2回戦では長崎の創成館を撃破。実に107年ぶりとなる夏の甲子園2勝を挙げたのである。

「32年ぶりと言っても、私としては初出場のつもりで戦わせていただいてますんで」 

 そう謙虚に振舞う監督の石飛文太が、表情を引き締めてこの2勝を噛みしめる。

「島根県の指導者の方からたくさん連絡をいただきまして、こう言われるんです。『島根でもできるってところを見せてくれ』と。うちが『できる』ということを試合で見せることで、島根県の小中学生が『島根の高校で野球をやりたい』と思ってほしいんです」

 石飛が紡ぐ想い――その伏線は3年前から敷かれていた。

地元・出雲市出身の選手が中心となる大社

 地元の出雲市出身であるセカンドの高橋翔和とライトの蒼空の双子の兄弟は、21年夏に島根大会で決勝まで勝ち進んだ大社の戦いぶりを目の当たりにし、「かっこいい」と憧れた。そして、ふたりが在学していた湖陵中のチームメートでもあった岸恒介らとともに「自分らの代で甲子園に行こう」と、同校への進学を決意したのだという。

 出雲で育った少年たちが、大社に集結する。

 レフトの下条心之介とセンターの藤原佑のように、小学校時代から知る選手たちが声を掛け合う。そこには当時から地元では有名で、のちに絶対エースとなる馬庭優太もいた。

 自身も中学時代には県内の高校から多くの誘いがあったなか、大社で野球をすることを決めた藤原は力強く言った。

「部員のなかには県外から来ている選手もいるんですけど、チームとして『地元から甲子園に行く』という意識が強くて。自分も出雲の力を見せたいなと思っています」

 大社は甲子園で力を見せた。

 夏の前から取り組んできた、近い距離から進塁打やタイムリーヒットを打つ練習に力を入れることで打線に繋がりが生まれ、32年ぶりに帰還した聖地では“大物食い”という、強烈なインパクトを放っている。それも、少年時代から知る者たちの結束も大きいのだと、選手たちは口を揃えている。

【次ページ】 「地域の声援がすごい」静岡・掛川西も初戦突破

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