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「ヘタクソなのになぁ(笑)」三兄弟の末っ子・セッター深津英臣が明かす“パリ五輪に選ばれた兄貴”への本音「でも、セッターは技術だけじゃない」
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph byHideomi Fukatsu
posted2024/08/01 17:05

東海大学時代の深津三兄弟。左から三男・英臣、現在は日本代表コーチの次男・貴之、パリ五輪に出場する長男・旭弘
英臣が正セッターを務めた2016年のリオ五輪予選、セカンドセッターが関田だった。ほぼすべての試合で英臣がコートに立ったが、それでも「関田の存在は常に脅威だった」と明かす。
「余裕なんてなかったです。毎日、こいつに勝たなきゃいけないって必死でした」
日本代表だけでなく、2016年から2018年まで2人はパナソニックでもチームメイトであり、同じポジションを争うライバルだった。練習中も意識しないようにと思っていても関田のトスに目が向く。平然と上げる一本一本のトスの精度に「すげーな」と思わされるたび、ガムシャラに練習した。
監督に直談判「次も関田を使ってほしい」
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経験と実績を評価され、主将も務めた英臣が正セッターを任されたが、一度でも崩れたらポジションを奪われる危機感しかない。コンディショニングにも十分気を配ってきたが、体調不良だったかケガだったか、欠場した自分に代わり関田が出た試合で勝利したことがあった。当時の監督からは、回復した英臣を次戦はスタメンで戻すと告げられたが、英臣はあえて申し出た。
「信用していただいているのは嬉しいです。でもチームとして考えたら、関田で勝ったんだから、次も関田を使ってほしい。そうじゃないと、関田のモチベーションがなくなる。もしも関田が出て、負けることがあったら僕はいつでも出られるように準備しますから」
主将として、チーム全体を考えて発した言葉だった。でも当然ながら、セッターとしての思いは異なる。
「そりゃあ嫌でしたよ。セッターとしてはそんなこと言いたくなかった。でもキャプテンだったから、監督にも『キャプテンとしてお話しさせていただきます』と言いました。それぐらい、関田に技術があるのは僕だけじゃなく誰もがわかっていた。あいつは、背中で引っ張るというよりも圧倒的な技術で周りの信頼を得られるセッター。だからスパイカーたちはあのトスが打ちたいと思うし、関田がいないと『関田がいれば』と思わせる。それぐらいすごいセッターですよ」