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オリンピックPRESSBACK NUMBER
金メダル直後、松友美佐紀が流した涙「湧いてきたのは“寂しさ”でした」“タカマツ”フィーバーを生んだリオ五輪「本人が明かす舞台ウラ」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byL)JIJI PRESS、R)Miki Fukano
posted2024/08/02 11:00
リオ五輪で金メダルを獲得した松友美佐紀。現在も現役でプレーを続ける彼女にインタビューした
「最初の頃、世界のトップクラスとは本当に大人と子どもなんてものじゃないぐらいの差がありました。でも、対戦相手に『ラッキー』と思われるようなレベルの時から常に、強い選手たちとどうやったら互角にやれるのかを考えてやっていました」
先輩ペアが切り開いてきた“世界への道”
「タカマツ」が誕生した当初は、国内にも世界と渡り合うペアが登場していた時期だった。「オグシオ」こと小椋久美子/潮田玲子が世界ランキング上位に位置し、「スエマエ」こと末綱聡子/前田美順組が08年北京五輪の準々決勝で世界1位ペアを破ってベスト4に入り、12年ロンドン五輪で「フジカキ」こと藤井瑞希/垣岩令佳組は史上初の銀メダルを獲得。タカマツは国内の実力者に追いつけ追い越せと鍛錬を重ね、力をつけていった。
その中で松友には「純粋に1人のバドミントン選手として成長していきたい」という信念があった。
「あのような選手になりたいというお手本が何人もいた中で、世界で一番強い選手になるという目標を立てて挑む時、一番分かりやすいのがオリンピックでした。誰もが本気で勝ちにくるオリンピックで真剣勝負をできたら、バドミントン選手としてそれほど楽しいことはないと思います。女子ダブルスでは、強い選手たちとオリンピックという舞台で戦うことができて嬉しかったという思いが強かったです」
「このまま終わったら後悔する」リオの逆転劇はこう生まれた
リオ五輪決勝では長身のデンマークペア相手に18-21、21-9、21-19で逆転勝ちし、日本勢初の金メダルを獲得した。第3ゲーム、16-19とされてから見せた冷静かつ強気のプレーはミラクルというよりも圧巻の一言。それにしても決勝戦という究極の大舞台で、ファイナルゲームの終盤に5点を連取しての逆転勝利はどのような心境の中で生まれたのだろうか。
「オリンピックに本気で勝ちに行くと決めてから、本当にたくさんの練習を積んできていたので、試合ではそれを一つでも出したい、一回でも相手をびっくりさせるようなプレーをしたいという思いで戦いました。やはり試合では自分がやってきたことしか出せませんし、たくさんの準備をしっかりやってきて本当に良かったと思いました」
16-19という大ピンチを迎えてもひるむことなく、すべてを出し切ろうという気概で相手を押さえ込んだ。
「最後にリードされていた場面では、『このまま最短で試合が終わるとしたらあと2球。1点でも多く取れたらそれ以上。このまま自分がやってきたことを出そうとせずに終わったら後悔するから、一回でも相手におっと思わせるプレーがしたい』という気持ちでした」