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「(内田)篤人さんの“SB絞りすぎるな論”、よくわかります」日本代表DF町田浩樹の守備哲学が面白い「欧州に来てからもずっと鹿島の…」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byPanoramic/AFLO
posted2024/07/14 11:08
23-24シーズン、ベルギーで自身初となるタイトルを経験した町田浩樹。ステップアップが噂される中で、DFとして興味深い哲学を持っていた
コンディショニングには気を配っていたが、1年間のなかでは良い時期も悪い時期もあった。ただ、思うようにコンディションが上がらない試合や疲労が抜けきれない状況で中心選手としてピッチに立ったからこそ、発見があった。
「『効率性』を学べました。どこで、“良い意味で”手を抜けるのかが大事だなと」
適切なポジションを、あえて“取り続けない”ことも大切だと町田は気づいた。具体的にはどういうことか。本人の解説を元にまとめると以下のようになる。
篤人さんの「SB絞りすぎるな論」、わかります
3バックの左センターバックに入った町田をイメージしてほしい。
相手が右ウイングの選手を起点とした攻撃を繰り返してくると、町田を含めたユニオンの左サイドの選手は、その対応に追われる。それが続けば乳酸がたまり、疲れてくる。そんなとき、町田はあえて、セオリーから外れたポジションを取ることがあった。
たとえば、相手のボランチがボールを持っているとする。その際、町田は右ウイングにボールが入ったときに対応する上で最適なポジションから〈少し右ウイングに近いポジション〉を取るのだ。こうなると、相手はパスを出すのをためらい、逆サイドからの攻撃などを模索する。そうなれば、相手の攻撃が続いて苦しんだユニオンの左サイドは、少しだけ息をつける。
90分、もっと言えば長いシーズンのなかでは、そういう細かい駆け引きが必要なのだ。実際、町田が尊敬する鹿島の先輩・内田篤人などは「逆サイドにボールがあるときに、あえて内側に絞りすぎない」ような工夫も必要だと唱えているが、「篤人さんの『サイドバック絞りすぎるな』論などはよくわかりますよね」と町田は言う。
相手のレベルが高いリーグでどう改善していくか
そうした駆け引きをしていくべきだと考えたきっかけは、過密日程以外にもある。
「一つあるとしたら……」
町田が例に挙げたのは、2022-23シーズンのEL、シャビ・アロンソ監督率いるレバークーゼン戦である。対峙する右ウイングはディアビだった。23-24シーズンはアストン・ビラに移籍し、マンチェスター・ユナイテッドやチェルシーを抑えてCL出場権獲得の原動力となった選手だ。
「前半に一度、ディアビに縦へ突破されてしまったんです。そのシュートは外れたのですが、縦への突破を何度も許したらまずいと考え、ポジションを少しディアビ寄りに変えました。そうやって工夫するだけでもだいぶ変わりましたから」
こういった手ごたえを積み重ねていく一方で、ステップアップが確実視される今後にむけて、課題もある。