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大谷翔平はなぜこれほど“6月に強い”のか?「最近は打つべくして打っている」すでに月間11本…驚異的なホームラン量産を支える“構え”とは
text by
阿部太郎Taro Abe
photograph byGetty Images
posted2024/06/27 17:01
21年の月間13本、23年の月間15本に続き、今季も6月だけで11本のアーチをかけている大谷翔平。絶好調の要因は“構え”にあった
シンプルなことだが、ボール球を振らない。特に低めの誘い球には手を出さない。そして、甘い球を捉える確率が格段に上がった。
14日のロイヤルズ戦からはルーティンに変化があった。打席に入ってすぐに、ホームベースの先端と三塁線の延長線上にバットを置いて、左足の軸足の位置が毎打席、同じ位置になるように工夫を凝らした。
この効果を語ったのは、4試合連続マルチ安打をマークしたデンバーでのロッキーズ戦後だ。新ルーティンのメリットを聞かれてこう答えた。
「立ち位置、同じふうに構えて同じ位置に立つのは、一番大事なこと。球場によってラインの太さが変わったりする。そこで多少ずれたりすることがないようにしたい」
ボール球を振らなくなった理由も、秘策は「構え」にあったと説明した。
「同じ位置で同じように構える。同じようにボールを見ることが一番大事なので、動く前の段階が大事」
大谷が探っていたのは、心地よい構えだ。左太ももの痛みも癒え、違和感なく、自然にボールを呼び込める構えの感覚がピタッとあった。
6月21日に古巣エンゼルスを相手に22号アーチを打った後、珍しく自身の打撃を自賛した。
「最近は打つべくして打っている」
移り変わる「正解」を追い求めて
思えば、昨年6月の爆発前にも、大谷は「構え」を変えていた。
不振の中、乗り込んだ5月下旬のシカゴでのホワイトソックス戦で、構えた時のグリップエンドの位置を数センチ下げた。
こだわるのは構えとボールの見え方。持論は「構えで打撃は8割5分決まる」だ。そこには、明確な意図がある。
「しっかりとした方向で力が伝わっていかないと、(バットが)いい軌道に入っていかない。同じように振っていても、最初の構えの時点で間違った方向に進んでいると、いい動きをしてもいい結果につながらない」
今回は構える時の軸足の位置を固定した。もちろん、体調や疲れによって「構え」はブレるため、以前の正解が正解でなくなるのが打撃の難しさだ。
しかし、その時、その時によって、大谷は「正解」を導くための考えを常にめぐらせている。
6月。今年も、チューニングを経て、大谷のバットが奏でる音色は美しくなった。