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[2024年からのフランクフルト]愛されたヤパーナーの次なる人生
posted2024/06/16 09:01
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph by
Itaru Chiba
現役最後のゲームが終了して30分以上にも及ぶセレモニーを終えた後、メインスタンド下に設置された階段を降りると、様々な人物が長谷部誠を取り巻いた。アイントラハト・フランクフルトの取締役であるマルクス・クレシェ、スポーツダイレクター(SD)のティモ・ハルドゥングを筆頭に、クラブ関係者が次々に抱擁を交わしている。皆は一様に親しみを込めて彼のことを『マコト』と呼ぶ。アイントラハトに所属してから約10年の歳月が過ぎ、長谷部はこのクラブの単なるレジェンドではなく、大切な家族の一員になっていた。
アイントラハト加入当初の長谷部は三十路に達した経験豊かなブンデスリーガーで、かつボランチの第一人者として認知されていたように思う。そのうえで、常にドイツ語でコミュニケートし、ピッチでは果てしない情熱をたぎらせる彼はいつしかクラブ内やサポーターから親愛の念を抱かれるようになった。
フランクフルトに住む筆者は町中で度々アイントラハト・サポーターに出くわす。筆者が通う語学学校教師のニコもそのひとりで、彼は授業中にアイントラハトの試合があると明らかにソワソワしてスマートフォンで試合経過を確認したりする。
そんなニコに長谷部の印象を聞いてみたことがある。
「ああ。君と同じヤパーナー(ドイツ語で日本人)だね。いや、でも俺はマコトのことをヤパーナーと認識して見たことはないな。彼は普通にドイツ語を話すし、ピッチでも仲間や審判と緊密にコミュニケーションを取って、時には敵と激しいトラッシュトークをすることもあるから、あくまでもアイントラハトの選手、俺たちの仲間って感じさ。プレーヤーとしての彼はどうかって? 確かに(オマル・)マーモウシュのように俊敏じゃないし、ロビン(・コッホ)のようなパワフルさもない。でも、マコトには何より卓越した頭脳がある。鋭い読みで自分より身長の高いFWにヘディングで競り勝ったり、自分より足の速い相手FWに先んじてインターセプトしたりするんだぜ。しかも40歳で……。そんな選手、見たこともないよ」