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高校生で日本代表→社会人でスランプ…陸上「消えた天才」絹川愛(34歳)が“男装コスプレイヤー”になったワケ「いったん違う人間になりたかった」

posted2024/06/11 11:02

 
高校生で日本代表→社会人でスランプ…陸上「消えた天才」絹川愛(34歳)が“男装コスプレイヤー”になったワケ「いったん違う人間になりたかった」<Number Web> photograph by (L)本人提供、(R)JIJI PRESS

高校生で日本代表に選ばれたものの、社会人では不完全燃焼に終わった絹川愛。引退後の彼女を支えたのは「男装コスプレ」だった

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小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

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(L)本人提供、(R)JIJI PRESS

 仙台育英高時代に大阪世界陸上1万mの代表に選ばれ、「平成生まれ初の日本代表」となった絹川愛さん。その後は紆余曲折を経て2017年に現役引退、2018年には人気テレビ番組『消えた天才』にも出演した。そんな絹川さんが再び注目を集めたのは、今年4月に現役復帰を発表した際だった。若くしてその才能を開花させた「天才女子高生ランナー」は、その後のスランプからいかに立ち上がったのか。また、競技生活を離れた際に「心の支え」となったものとは?〈全3回の2回目/つづきを読む〉

 絹川はまだまだ伸びる。この頃、誰もがそう信じていた。

 社会人4年目となった2011年には、初めてハーフマラソンに挑戦し、札幌、上海と国際大会で2戦続けて好走を見せた。高校時代に出場した大阪大会に続いて、2度目の世界陸上となった8月の韓国・大邱大会の1万mこそ脱水症状に見舞われ最下位と辛酸をなめたが、トラックだけではなくより長い距離への適性も示し、翌年のロンドンオリンピックにはマラソンで挑戦するという構想もあった。 

 ただ、ケガの影響もあり、結局ロンドンの選考会はマラソンではなく1万mに絞って出場。しかし、北京に続いてまたも出場は叶わなかった。

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 これ以降は徐々にレースでの活躍が目立たなくなっていく。

 陸上関係者以外に印象が薄いのは、もしかすると彼女がオリンピックに出ていないからかもしれない。

オリンピックは「そりゃあ、行きたかったですよ」

 オリンピックへの思いを聞くと、こんな本音がこぼれた。

「そりゃあ、行きたかったですよ。世間はやっぱりオリンピック、オリンピックって言うから、それに出なきゃダメなのかなって。チャンスはあったんですけどね」

 ことさらに強調するわけではないが、ロンドンの選考については割り切れない思いを持っていたようだ。絹川は当時、五輪出場の条件である参加標準のA記録を切っていた。選考の対象となった日本選手権でも、じつは3位に滑り込んでいる。3位以内に入れば可能性はあると聞かされていたが、結果は落選だった。不明瞭な選考基準に泣かされたケースの1つと言えるだろう。

「あの時は、なんでって思いましたよ。すごく悲しくて、大人たちに裏切られたって気持ちもありました」

【次ページ】 2017年に競技を引退…傷心の絹川を支えたのは?

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