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初挑戦の1万mで世界陸上代表の衝撃…“破天荒プリンセス”絹川愛が「天才女子高生ランナー」になった日「何も知らなかったのが良かった」
posted2024/06/11 11:01
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
BUNGEISHUNJU
「とくに新聞記事の影響が大きかったですね。受け入れてもらえた感がすごくて、ちょっと意外でした」
そう言って、絹川愛は笑顔を見せる。
事の発端は4月1日、自身のXにこんなポストを書き込んだことだった。
「今年 陸上の活動を再開することになりました。どこでどんなことをするのか…随時Xでお知らせしていくつもりです」
エイプリルフールのつぶやきだが、ウソではない。
後を追うように、5月7日付けのスポーツ報知に、絹川のインタビュー記事が掲載される。そこで明かされたのはさらに驚きの内容だった。
現在、男装のコスプレイヤー”蓮弥”として活動している。「2021年から2年連続でコスプレ界で著名な雑誌『コスプレイモード』のベストコスチューマーを受賞」するほど知られた存在だという。そしてここでも「第一と第二の人生を合わせた第三の人生を歩んでみようかな」と、陸上との二刀流に含みを持たせた。
いったいどういうことなのか、と世間がざわついたのも無理はない。なにせ、陸上界からしてみれば、あの絹川愛なのだ。
かつて「天才女子高生ランナー」だった絹川
中高生の頃から中長距離種目で活躍。2007年の世界陸上・大阪大会には、「平成生まれ初の日本代表」として高校生で出場を果たした。2015年3月に実業団のミズノを退社するまで、浮き沈みの激しい競技人生だったが、天稟の才があったことは間違いない。
再開がもし現役復帰を意味するのであれば、それがどこまで本気なのか、関係者が知りたいのはそこだろう。
絹川の耳にも当然、そんな声が届いているようだ。
「とくに来年、ちょうど世界陸上が東京で開催されたり、26年のアジア大会が名古屋だったりする中で、競技再開ってどういうことよって。私も動くならずっとこのタイミングだなって考えていたので……」