炎の一筆入魂BACK NUMBER
「やりたい野球とやれる野球は違う」投高打低のセ・リーグで粘り強く上位を窺うカープ新井監督が選択した最善策
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2024/05/20 17:00
無いものねだりはせず、粘り強く現実的な戦い方を続ける新井監督。その心中やいかに
外国人2選手が抜けたことで、昨季以上に若手のチャンスが増えた。開幕から34試合で32通りのスタメンを組みながら、若手に出場機会を与えている。ともに2年ぶり一軍出場となった試合で宇草孔基はチーム最多3本塁打を放ち、同じく中村健人は先制ソロと勝利に貢献した。アピール合戦は一軍に限ったことではない。5月8日に一軍登録された末包昇大は二軍での日々で変化を感じたという。
「今年はみんな、目の色を変えてやっている。そこに対する危機感もあった。うかうかしていられないなって。それに上がった若い子たちが呼ばれたときには結果を出して、負けていられないなと」
末包も一軍昇格即スタメンから4戦連続安打と結果を残し、二軍選手に新たな希望を与えた。ケガから復帰したシャイナーを無条件で昇格させるような特別扱いをしない判断も、チーム内の競争意識を高めている。
トライアンドエラーの繰り返し
一方で、開幕スタメンに名を連ねた田村俊介は5月8日に二軍降格となった。昨オフ、侍ジャパンに選ばれブレーク間違いなしと思われた逸材でも、思いどおりの成長曲線を描けるわけではない。挫折もまた、若手の成長過程で必要な経験のひとつだ。
「野手(の育成)は時間がかかる。今、出ている選手が経験を積むことによって少しずつ成長していって、数カ月後に(打線の)輪郭が見えてくればいい。誰が出てくるか。使っているのは監督。すべて監督の責任なんだから、思い切ってやってくれたらいい。私も数々の失敗をしてきた。信じられないようなミスも、たくさんしました。トライアンドエラーの繰り返し」
いずれは強烈なパンチを繰り出す攻撃力を備えなければ、ペナントレースを抜け出すことはできない。新しい力が芽生えるまで、グッとガードを固めて戦っていくしかない。そうすることできっと“やれる野球”から“やりたい野球”に近づいていくはずだ。