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女子バレー宮下遥29歳が現役引退…“天才少女”が歩んだ15年のバレー人生「私がつぶしちゃった…」今も悔やむ8年前の出来事とは?
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![田中夕子](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/-/img_63c0172edf1a3eec5d5017836b5eb9301895.jpg)
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byAFLO SPORT
posted2024/04/30 17:06
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今季限りでの現役引退を発表した宮下遥(写真は2014年ワールドグランプリ)
2012年ロンドン五輪で日本代表のセッターとして銅メダル獲得に導いた竹下佳江が現役引退。直後に抜擢されたのが、2010年から登録メンバーに名を連ねていた宮下だった。
2013年8月のワールドグランプリで日本代表デビューを果たし、翌年の世界選手権、2015年のワールドカップに出場。各国の敵将は「素晴らしいセッターが出てきた」と、宮下の才能を褒めたたえた。
しかし、本人が口にするのは反省ばかり。ライト側のトスを得意とする宮下が課題としたのが、レフト側からの攻撃だった。当時の代表は主将でエースの木村沙織が中心で、いかに木村を活かすかがセッターに求められる大きな要素でもあった。
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木村に限らず、エース勝負の気質が強い女子バレーの世界では、いかに打ちやすくレフトにトスを上げられるかがセッターに求められる要素でもある。所属する岡山のスタイルとは異なるバレーな上に、トスを「高く・丁寧に」と意識をすればするほどボールが伸びず、逆に丁寧に上げようとしすぎると手で持ちすぎてタイミングがズレてしまう。これなら大丈夫、という自信が得られないまま16年のリオデジャネイロ五輪出場をかけた最終予選に出場した。
そんな大舞台で宮下を救ったのは、エースの木村だった。
大会に向けた合宿で、早朝から一人で自主練習をしていた宮下に付き合い、ひたすらスパイクを打ち続けた。そして出場権獲得がかかり、結果的に五輪出場を決めたイタリア戦では「全部自分に持ってきて」と宮下にトスを要求し、実際にこれぞエースという獅子奮迅の活躍を見せた。試合後、ミックスゾーンの隅で「沙織さんを信じて上げ続けた」と感謝を述べる宮下の目からは涙がこぼれていた。
若きエース候補・古賀紗理那の落選
迎えたリオ五輪はロンドン大会に続いてのメダル獲得は果たせなかった。
ただ、「メダルを逃した」こと以上に宮下の心に今も突っかかっていたのは、五輪予選で木村の対角に入った古賀紗理那を最後まで活かしきることができなかったことだった。
19歳の若きエースと期待を集めた古賀は高い打点からクロス、ストレートへ打ち分ける能力がある。だがその高さを活かすコンビも一朝一夕で完成するものではない。当時の古賀も日本代表での経験は浅く、「このトスは打てない」とセッターに要求する強さがまだなかった。
「大丈夫?」
「大丈夫です」
互いに気遣うだけで、会心の一打には遠い。必然的にトスの本数は宮下が得意とし、信頼を寄せる長岡望悠がいるライト側へ偏った。その結果、古賀はリオ五輪予選の終盤に出場機会を減らし、本大会の直前にメンバーから落選した。