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《目指すは52年ぶりの金メダル》山内晶大、山本智大、西田有志が語るパリ2024への決意「日本の男子バレーは強くて面白いと証明する!」
posted2024/05/15 10:00
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Kiichi Matsumoto
「1日がめちゃくちゃ短いんですよ」
聞けば、就寝時間が早いことが理由らしい。銀髪のバレーボール男子日本代表、西田有志は「見た目と全く異なる」生活を過ごしていた。
「6時に起きて、すぐに体幹トレーニングをしてからシャワーを浴びて朝食を摂ったら体育館へ行く。練習前に治療とストレッチも入念にして、練習を終えて帰宅してからもリカバリーをしたり、夕食を準備して、食べて、18時には風呂へ入る。1時間ぐらい交代浴をして、出たら洗濯。干して、少しのんびりしたら21時には寝る。ストイックに思われるかもしれないですけど、自分にとって今はこの生活が自然なんで。身体の調子、めちゃくちゃいいんです」
跳んで、着地して、すぐさま別の動きに移行する。足腰にかかるダメージは深く、時に突発的なケガも発生する。パナソニックへ移籍した初年度、2023-24シーズンの終盤はケガで出場機会が限られていたが、焦りはなかったと振り返る。
「順を追ってできているので、復帰してコートに立てば普通にやれる、と自信がありました。だから心配はなかったですね」
ただし、とひとつ付け加えた。
「オリンピックの切符が獲れていない状況だったら、もっと焦っていたかもしれないです」
2023年10月7日。バレーボール男子日本代表はパリ2024出場を決めた。
ネーションズリーグの銅メダル、アジア選手権の金メダルと好成績を残し、世界ランキングも一気に上昇した。「男子バレーは強い」と周囲からの期待も日増しに高まり、オリンピックの出場権もきっと獲得するはずだ、と楽観する世論とは裏腹に、9月30日に開幕した予選の初戦、世界ランクだけを見れば28位(当時)と格下のフィンランドにフルセットで辛勝。翌日はエジプトにフルセットで敗れる波乱のスタートに、「出場できないのではないか」と手のひらを返す論調もあった。
だが真の強さは追い込まれてから、とばかりに、3戦目から5戦目まですべてストレートで勝利し、6戦目のスロベニアにストレート勝ちを収めればオリンピック出場が決まるプレッシャーの中、3-0のストレート勝ち。劇的な形でパリ2024の出場権を手に入れた。
山内晶大「勝つことの重みや難しさも感じる」
オリンピック出場は東京2020に続いて2大会連続ではあるが、現在主軸を担う選手たちの中に、予選に勝利して出場権を手に入れた経験はなかった。2014年に日本代表へ初選出され、2016年のリオ2016予選も経験した山内晶大は、今では「最強」と呼ばれる日本代表が、勝つことの難しさに直面していた頃を知る選手の1人でもある。
「代表に入って10年、あっという間といえばあっという間ですよね。今は海外へ出た選手たちが海外のトレンドを持ち帰って、海外の選手たちに適応できる選手がたくさん出てきて、日本も上位に食い込めるようになった。でも僕としてはベースになっているのは2014年から2016年頃の苦しくて、勝てない時なので、今こうして勝てている喜びも感じる一方で、勝つことの重みや難しさも感じる。少し前に入って来た選手たちとは、ちょっと違う感情もあるのかな、とは思います」
そもそも山内は中学でバスケットボール部に所属し、高校からバレーボール部に入るも全国大会どころか県大会で1つ、2つ勝つことが目標、という名古屋市立工芸高の出身。日本代表に初選出されたのは愛知学院大在学時で、自虐ではなく「ローテーションすらわからない素人だった」と当時を振り返るほど。204cmの高さと将来性を買われ、日本代表に抜擢されたが最初はついていくのがやっとで、自分のプレースタイルを意識する余裕すらない。
自分がどうしたいか。何が武器なのか。真剣に考え、向き合うようになったのはリオ2016を逃したことが契機になった。
「そもそも最初はこの大会で勝った、負けた、というのが何を意味するかもわかっていなかったんです。でも少しずつ勝てる喜び、負ける悔しさを経験する中で、自分が点を獲りたい、というがむしゃらさが出てきた。そこから東京2020に向けて、メンバーに残ればオリンピックに出場できる、と考えた時、自分のプレー、求められているものが何か。とにかく必死で、もがいて、ひたすら考えるようになりました」