山本智大「リベロに注目してもらえるようになった」

　ほぼ同じタイミングで、日本の武器として新たに加わったのが2018年、2019年に初選出された西田と、リベロの山本智大だ。豪快でがむしゃら、自ら5本のサービスエースを含む6連続得点で試合を決める、まるでマンガの主人公を地で行くような西田の攻撃力に対し、選出された当初は「3番手か4番手、そこから這い上がれ、と言われたのが悔しかった」というのが山本だ。

山本智大（Tomohiro Yamamoto）1994年11月5日、北海道生まれ。171cm、69kg

　もともとレシーブに長けた選手が多い日本には、そこに加えて経験やリーダーシップを備える優れたリベロが多くいる。その中で自分をどうアピールすればいいのか。悩むよりも前に実戦の機会が与えられ、チャンスを見事につかんだ。2019年のネーションズリーグ、ワールドカップの活躍でリベロとして不動の地位を築いた山本は、東京2020、2022年の世界選手権を経て、今では日本にとって欠かせぬ存在へと成長を遂げた。

「日本の武器が守備力だ、と言われるようになって、リベロに注目してもらえるようになった。その状況が僕はすごく嬉しいし、リベロになりたいと思っている子どもたちに届いてくれたら最高ですよね」

　ただ拾うのではなく、計画的かつ組織的に拾って、つなぐ。その“守備力”こそがまさに日本の武器でもある。ミドルブロッカーの山内は「どこに跳ぶかを明確にして、あえて空けた間やスペースに入ったレシーバーに拾ってもらう」と言い、後ろで待つ山本は「このコースは空けてくれ、とブロッカーと連動して、相手のスパイカーが『いない』と思った場所で自分がレシーブを上げるのが最高」と笑う。

　常套句のように繰り返された「高さ」と「パワー」で劣って来た日本が、地上戦で世界との戦いを制する。守備の司令塔として中心となる山本に「世界屈指のオポジット」と言わしめる西田ですら、日本の武器である鉄壁のディフェンスにはむしろ舌を巻く。

「トモさんがいると嫌なんですよ。スパイクを打っても、レシーブで拾われる未来しか見えないんです（笑）」

西田有志「日本のバレー面白い、って思われたら最高」

　オリンピック予選を終えてから息つく間なく日本国内、欧州各国でのリーグ戦が始まり、半年に及ぶ戦いが幕を閉じれば、また日本代表でのシーズンが始まる。

　目指す先は、パリの地で、いかに輝く結果をつかみ取ることができるか。オリンピック出場が目標ではなく、本大会で勝つこと。頂点に立つことを掲げる今、1人1人の選手が個の成長を誓い、パリ2024のコートに立つ12名に入るべく、鍛錬を重ねる。

　寄せられる期待は、オリンピック予選の比にならない。だがそれも、プレッシャーとして背負うのではなく、力にするだけ、とばかりに西田が意気込む。

「バーンと1本打っても決まらない。やっている選手はラリーが続けば続くほどしんどいですけど、そうなれば日本はどこにも負けない自信がある。バレーが好きな人にも、普段は見ない人にも、オリンピックで見た時に『日本のバレー、面白い』って思われたら最高だし、そのために僕たちは練習している。最高のパフォーマンスを発揮したいです」

　日本の男子バレーは強くて面白い、と証明する。目指す大舞台は、間もなく――。

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