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オリンピックPRESSBACK NUMBER
陸上歴わずか1年半で「世界大会入賞」の衝撃…異例のキャリアの“高校女子No.1ランナー”澤田結弥が米の名門・ルイジアナ州立大へ進学を決めたワケ
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph by(L)jaaf、(R)Hideki Sugiyama
posted2024/03/25 11:02
米・ルイジアナ州立大への進学を決めた浜松市立高校の澤田結弥。1500mでは小林祐梨子に次ぐ高校歴代2位の4分12秒87のタイムを持つ
心に引っ掛かりを感じつつも、海を渡ることには後ろ向きだった澤田の考えが変わりはじめたのは、3年生になった昨年3月に現地を訪問してからだった。
春休みを利用して渡米し、現地の大学の陸上競技場やトレーニング場など、いくつかの施設を見て回る機会をもらった。そのうちのひとつだったルイジアナ州立大はMLBやNBA、NFLでもドラフト上位選手を毎年、多数輩出する米国スポーツ界の超名門校だ。陸上競技でも棒高跳びの現世界記録保持者であるアルマンド・デュプランティス(スウェーデン)の母校としても名高い。
コーチから感じた「個々の選手を見る」というスタンス
だが、そんなプロ顔負けの環境面だけでなく、澤田の心を捉えたのは1人の指導者だった。同大で中長距離やクロスカントリー種目を指導するヒューストン・フランクスコーチだ。
「私は高校までいわゆる“駅伝強豪校”で競技をやってきたわけではありません。どちらかと言えばコーチと相談して、自分で考えながら……という環境で成長してきたと思っています。フランクスコーチは話していると『チームを見る』のではなく『個々の選手を見る』というスタンスが伝わってきて、そこが良いなと感じました」
NCAA1部の強豪である陸上チームには欧州や南米など非英語圏出身の選手たちも多く所属していた。そんな選手たちと食事に行く機会もあったが、そこでも選手たちが口にしたのはフランクスコーチへの信頼感だったという。
「『なんでルイジアナを選んだの?』と聞くと、みんな『フランクスコーチがいたから』と言っていて。いろんなバックボーンをもった選手たちにもこんなに慕われている。それがすごくいいなと。練習にも参加させてもらったんですけど、これだけ信頼されてる人の元に行きたいなと思えました。
あとは一緒に行った両親が寮や施設を見て『これなら安心して行けるね』という心境になったのも大きかったです。帰国してからはむしろ父は『行った方がいいよ!』みたいに言うようになりました(笑)」
少しずつ海外の大学が現実的な進路のひとつになりはじめていた。そして、ダメ押しとなったのが高3時に陥ったスランプだった。
<次回へつづく>