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陸上歴わずか1年半で「世界大会入賞」の衝撃…異例のキャリアの“高校女子No.1ランナー”澤田結弥が米の名門・ルイジアナ州立大へ進学を決めたワケ
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph by(L)jaaf、(R)Hideki Sugiyama
posted2024/03/25 11:02
米・ルイジアナ州立大への進学を決めた浜松市立高校の澤田結弥。1500mでは小林祐梨子に次ぐ高校歴代2位の4分12秒87のタイムを持つ
杉井は元110mハードルの日本王者だ。2005年に浜松市立高に赴任すると、陸上部を全国的な強豪校に育て上げ、現在は日本陸連の強化育成担当も務める名伯楽だ。
その杉井をしてなお、この結果は想像以上のものでもあった。
澤田は、中学までは小学1年生からはじめたバスケットボールに打ち込んでいた。
その一方で、秋には部活横断で集められる「駅伝部」にも招集されていた。幸か不幸か、センスの面ではバスケよりも陸上に分があることは本人もすぐに察したという。中3の秋には全国大会で5位に入るなど、才能の片鱗は見せていた。
「中学で駅伝を走ってみてとても楽しかったので、高校では都大路とインターハイに出られたらいいな……と思って陸上を選びました。県内の他の高校からもいくつか声はかけてもらったんですが、もともと地元で学校の雰囲気も好きだった浜松市立高に行きたくて。そのまま高校3年間で陸上は辞めようかなと思っていたくらいだったんですけど」
青天の霹靂だった「米国の大学からのスカウト」
「なんとか一度くらいは全国の舞台で勝負できたらいいな――」
高校入学直後は、そんな青写真を描いていた澤田の下に、予想外の一報が届いたのはU-20世界選手権から帰国した直後のことだった。
大会での積極的な走りを評価した複数の米国の大学から、スカウトが舞い込んだのだ。
「最初に杉井先生から聞いたときは『いや、断ってもらって大丈夫です』という感じでした(笑)。全然、現実的な進路としては考えられなかったです。でも、先生から『せっかくの機会なんだから、すぐ断っちゃうのはもったいない。もう少し考えてみたら』と言われて」
本格的に陸上競技をはじめてまだ1年半。そもそも当時はまだ高校卒業後の競技継続すら曖昧だった。そんな中で、なかなか現実的な進路に海外の大学が入って来るような状況ではなかった。
ただ一方で、澤田の通う浜松市立高は、学年の半数以上が国公立大に進学する静岡有数の進学校でもある。澤田本人も外国語系の学部へ進学の興味を持っており、実はそれほど希望していた進路とも外れていないという現実もあった。