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元巨人のプロ野球ピッチャーですら補欠に「僕が入るスキがなかった」史上最強“雪合戦チーム”とは何者なのか?「あの元甲子園球児も在籍」 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byKei Nakamura

posted2024/02/23 17:01

元巨人のプロ野球ピッチャーですら補欠に「僕が入るスキがなかった」史上最強“雪合戦チーム”とは何者なのか?「あの元甲子園球児も在籍」<Number Web> photograph by Kei Nakamura

競技雪合戦の雪球。専用の雪球製造機で作る。試合は7人対7人の3セットマッチ(1セット3分)で行われる

「速い球だけでは勝てない」

 いくら速い球を投げてもシェルターと呼ばれる木製の壁に隠れられると、そう簡単に当たるものではなかった。強いチームの共通点はロブ(高い球)の精度の高さだった。つまり下から山なりの雪球を放り、シェルターに身を潜める敵を上からねらうのだ。田村が言う。

「そのチームが練習をやっているかいないかの差は、ロブの高さに出るんですよ。僕も夜、よく1人でひたすらロブの練習をしていましたから。シェルターの陰で、相手がどういう姿勢でいるかを読んで、イメージ通りの軌道のロブを入れて当たったときは本当に気持ちいい」

 雪合戦の戦い方を少しずつ学んでいったでぃくさんズ神出は毎大会、ある程度のところまで勝ち進むのだが、なかなかベスト8の壁を破れなかった。そのため長らく「無冠の帝王」と呼ばれた。

 田村が勝てなかった原因を語る。

「戦術がころころ変わっていた。攻めたり、引いたり。だから『迷いの神出』とも呼ばれていました」

「野球では味わえない興奮がある」

 彼らが安定した成績を残せるようになったのは2011年に加入した旭岡学がセンター(ポジション)に入るようになってからだった。「センター」とはコート中央に設置されたシェルターのこと。スタート時、この裏を取るかどうかが戦術の1つのキーとなる。取ればより攻撃的布陣になるが、そのぶん当たりやすくなる。またセンターに走る選手は敵の集中砲火を受けることになるため開始早々、アウトコールを受けかねない。

 旭岡は極端にリスクが高く、かつ恐怖感と戦わなければならないポジションを引き受けた理由をこう語る。

「僕はだいぶ後から入ったので、そこくらいしかやるポジションがなかったんです。スタート前は『嫌だな』という気分になる。とくに球が速いチームのときは。でもセンターに無事にたどり着いて、3分間(1セットあたりの試合時間)乗り切ったときの快感が癖になってきて。雪合戦には野球では味わえなかった興奮がありましたね」

 昨年の昭和新山国際雪合戦で旭岡は20回センターまで走り、11回センターを奪い取った。驚異的な生存率である。

 旭岡という「飛び道具」を得たでぃくさんズ神出の戦いには迷いがなくなり、結成12年目となる2014年、昭和新山国際雪合戦を初めて制した。そして、翌年には連覇を達成。さらに2017年、2018年にも2度目の連覇を成し遂げている。まさに黄金時代の到来だった。

 年1回発行されている『雪合戦マガジン』の編集長の山田雅志は言う。

【次ページ】 元巨人ピッチャーでも補欠に…

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