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ネガティブな報道が多かった“外国人鬼コーチ”「日本人は目を見て話すのが苦手…」なぜエディー・ジョーンズの会見はこれほど面白いのか?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2024/01/18 17:01
1月15日のエディーさんの会見。さながら「エディー・ジョーンズ教授の熱血教室」のようだった
就任にあたってネガティブな報道が多かったことを払拭しようとしたのか、この会見でメディアを巻き込んでいこうとする意志が明快だった。実際に面白く、楽しく、そして勉強になる時間だった。
私がもっとも興味深かったのは、インターナショナルの試合における「インプレー」、ボールが動いている時間についての考察だった。エディーさんは、昨今のラグビーについて「プレーが止まっている時間が長くなっています」と話した。
「この2年間の国際ラグビーの傾向を分析していくと、インプレーの時間は平均して30秒ほどで、プレーされていない時間が70秒ほど続きます。なぜ、これだけボールが止まっている時間が長くなったかというと、TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル。映像判定)やHIA(ヘッド・インジュアリー・アセスメント、頭部へのダメージがないかの検証)に割く時間が多くなったためです」
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強度の高いプレーが続いた後に、かなり長いリセットの時間が取れる。こうしたゲームの傾向をエディーさんは端的に言い表した。
「現在のラグビーは、アメリカンフットボールのNFLに近づきつつあります。ひとつのプレーが行われ、そのあとにリセットの時間があり、またセットプレーから試合が再開されるのです」
いかにも、NFLが大好きなエディーさんらしい表現である(一時期、エディーさんはヒューストン・テキサンズのキャップをかぶっていたことがあり、私は「テキサンズのファンなんですか?」と質問したことがあった。エディーさんはニヤッとして「ロゴが好きなんです」と答えた)。
世界的なフィットネスの向上、プレーの強度が強調されてきたが、実際には回復に充てられる時間が長くなってきたのだ。
「勢い=質量×速度」
さあ、そこで問われるのがエディーさんが掲げる「超速ラグビー」の表現方法だ。
エディーさんの意図としては、インプレーの時間を増やして相手を振り回すことにあるのではなく、「30秒間のなかで、速度の向上を図ることに重きを置く」ことになるという。
そこで解説に出されたのが「ニュートンの第二法則」だった。