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「野球しようぜ」大谷翔平の故郷・奥州市で250人の小学生が野球教室に参加…全国に寄贈された「大谷グローブ」はどう受け止められている? 

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及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

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posted2023/12/31 17:00

「野球しようぜ」大谷翔平の故郷・奥州市で250人の小学生が野球教室に参加…全国に寄贈された「大谷グローブ」はどう受け止められている?<Number Web> photograph by Ayako Oikawa

大谷翔平の生まれ故郷・岩手県奥州市で開催された「プレイボールフェスタ」会場の体育感に飾られていたユニフィームやサインボールの数々

肘検診やストレッチ指導も実施

 岩手県高野連北奥支部は2018年からこのようなイベントを行なっているが、高校生と小学生の交流に加えて、専門家と連携して地元の整形外科の医師による肘検診や柔道整復師のストレッチ指導なども提供している。 

 検診にあたる大歳憲一医師、高橋幸洋医師は痛みの有無を確認しながら、子ども、父兄、指導者とモニターを見ながら肘に問題がないか検診を進める。

 肘に機械を当てられ、子供たちは一気に緊張した表情になったが、病院の診察室ではなく、広い場所で周囲にチームメイトたちもいるせいか、徐々にリラックスした表情になった。

 大歳憲一医師は2007年から福島県で、2017年から出身地の奥州市で学童野球の肘検診に携わっている。

「小学生の野球肘には内側の障害と外側の障害の2つがある。外側の障害は無症状で中学、高校になると痛みが出る。発生率は低いが手術をしないと治らないケースが多い」と話す。

 肘の外側の障害は100人に3件程度見つかるが、「以前、盛岡で同じような検診をした際、問題があって泣き出した子がいました。菊池雄星投手もイベントに参加してくれて、泣き出す子がいるとすぐにサイン色紙やサインボールを子供に渡して『頑張れよ』と励ましてくれて助かりました」と振り返る。

 肘に問題が出るのは「負荷の問題ですね。投げすぎ、練習しすぎということが多い」と大歳医師は警鐘を鳴らし、イベント後には父兄や指導者対象の「障害予防講習会」を開催し、肘検診の意義や予防法、日頃のケアなどについての講義も行なった。

 柔道整復師によるストレッチのブースでは柔軟性はもちろん、体のバランスを確認する実践指導がされたが、父兄や指導者も参加し、「あいたたた」とうめき声をあげながら、子どもたちと共に汗を流す場面もあった。

奥州市といえば野球と言ってもらえるように

 岩手県は2012年から県内各地で学童野球肘検診を行っており、父兄や指導者の意識も高まっている。また奥州市だけではなく、県内各地で高校生や大学生、社会人による野球教室やイベントも行われ、「未来に野球を繋ぐ」ための努力が行われている。

 ちなみに奥州市は小学生、中学生、高校生、そして社会人チームが所属する「奥州市野球協議会」を作り、社会人が中学生を、高校生が小学生を指導するなど、「縦のつながり」を大事にした交流を行っている。

 協議会の発起人で水沢工業高校野球部顧問の千葉渉太教諭は「世界を変えてきたものは、いつの時代もたったひとりの強い思いだと思います。将来的に、奥州市といえば野球と言ってもらえる日が来ることが願いです」と話す。

「野球しようぜ」

 大谷のグローブをきっかけに野球を始め、野球関係者の熱意と支援を受けながら白球を追いかける子どもたちが増え、大きな笑顔が広がることを願うばかりだ。 

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