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野村克也でも星野仙一でもなく「岡田彰布がNo.1監督」阪神で25年“チーム事情を知る男”が語る「なぜ天才的な采配ができるのか?」
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/11/03 11:00
野村克也も星野仙一も、岡田彰布には敵わない――阪神で25年間スコアラーを務めた男が明かす、その真意とは
「野村さんの教えは細かくて、当時の選手には難解だったのかもわからん。岡田は方針をシンプルに伝えるから、選手の頭に入ってきやすい。『野球は守りが80パーセント。捕れる球を必ずアウトにすればいい。当たり前のことを、当たり前にできるようにすればいいんや』と言いますやろ。打者にも、『根拠を持っていれば初球から振っても構わん。だけど、ピッチャーは球数を放らされたほうが嫌なんや』と繰り返し説く。今年、それを実行して四球をたくさん取って、得点につなげたでしょ」
シンプルかつ現実的…岡田の言葉
阪神はセ・リーグでチーム本塁打は5位の84本、長打率も5位の3割5分2厘だった。しかし、四球は1位の494を記録し、得点は1位の555を数えた。そこには、岡田の“現実的な意識付け”があったと三宅は考える。
「岡田もミーティングに出てきたよ。野村さんと違ってあまり喋らないけど、大事なことをシンプルに言うてたな。前の監督時代も、フォークのいい投手の時に『低めのボールは全部捨てろ。三振しても構わへん』って。しかも、『低めを見逃し三振しても査定から外してもらう』と自分でフロントに掛け合って、選手を気持ち良く送り出すんや」
佐々木朗希が先発した今年6月4日のロッテ戦でも同じ指示を出した。4四球を奪ってチャンスを作り、大山悠輔のタイムリー1本で無双状態のエースに黒星をつけた。
「『バッターは打っても3割』と常に頭にあるから、現実的に考える。『無死満塁ならゲッツーでいい』『1死三塁で普通の守備隊形だったらセカンドゴロで構わない』ともよく言っていた。状況を考えずにヒットを狙って、凡退するのを嫌がる。取れる時に1点を積み重ねていく」
岡田が怒る“あるポイント”
岡田は、チームの大砲も同じく扱った。8月15日の広島戦、2点を追う8回無死二、三塁で佐藤輝明が空振り三振に倒れた。試合後、岡田監督は〈もう状況やんか。なあ。ノーアウト二塁三塁で内野後ろ下がっとって、何を打ったらエエの。セカンドゴロ打ったらワンアウトサードやで、1点差で〉(サンスポ/8月15日配信)とコメントした。