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野村克也でも星野仙一でもなく「岡田彰布がNo.1監督」阪神で25年“チーム事情を知る男”が語る「なぜ天才的な采配ができるのか?」
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/11/03 11:00
野村克也も星野仙一も、岡田彰布には敵わない――阪神で25年間スコアラーを務めた男が明かす、その真意とは
「岡田が何か言っても、嫌味に聞こえへんのよ。誰に対しても態度が変わらないからな。小山さんには『勝てば最終的にはみんなが幸せになる』と主張してたな。『完投したい』という先発の欲でチームが負けたら本末転倒だと言いたかったのかもしれない。はっきり言う性格やから、現役の頃から岡田を好きな選手もいれば、そうでない選手もいたよ。だけど、総合的に見たら7割は好きだったと思うな。結局、嘘をつかんし、告げ口も一切しない。親分肌なんよ。星野もそうだったけど、岡田も上手く選手を引っ張っとるよ」
「スコアラーの家族も優勝旅行」岡田が実現
阪神が日本一に輝いた85年、選手会長の岡田は打撃投手やスコアラーなど裏方への心配りも欠かさなかった。シーズン中に食事を奢るだけでなく、オフには給料を上げるようにフロントと交渉した。
「ビックリするほどもらったよ。『岡田ありがとう』って言ったもん。優勝旅行でも裏方の家族、両親まで無料招待にしてくれた。他球団のスコアラーに聞いたら、『ワシらは自分1人だけよ。しかも、雑用を手伝えと言われたからV旅行なんて行かなかった。阪神に呼んでほしいわ』って羨ましがられたもん。岡田の交渉力の賜物よ。プロ野球選手会の会長としてFAを導入した時も、オーナー陣が感心しとったみたいよ。『あんなに弁の立つ野球選手はおらん』って」
岡田彰布は野村克也の研究心、星野仙一の政治力を兼ね備え、幼少期から養われた感性をミックスした“阪神最強監督”なのだ。
「監督って『器』だと思うわ。選手を引っ張っていける、チームを結束させる力があるかどうか。そのためには、『この監督についていけば勝てる』と思わせる理論、仕事に対する姿勢を持っていないとあかん。岡田はシンプルに現実的な意識付けをして、依怙贔屓もしなかった。だから、優勝できたん違うかな」
岡田は名監督になる『器』をどのように身につけていったのか。幼稚園時代から彰布少年を知る三宅は「そういえば、小学生の時にキャバレーで……」と回想を始めた。
〈つづく〉