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藤井聡太21歳「点数でという方針に…」“王座戦、生の対局直後姿”を見て思い出した渡辺明九段の「ずいぶんと大きくなりましたよ」 

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片山良三

片山良三Ryozo Katayama

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photograph byKyodo News

posted2023/09/14 17:00

藤井聡太21歳「点数でという方針に…」“王座戦、生の対局直後姿”を見て思い出した渡辺明九段の「ずいぶんと大きくなりましたよ」<Number Web> photograph by Kyodo News

王座戦第2局、後手の藤井聡太七冠は永瀬拓矢王座との長期戦を制して1勝1敗のタイとした

「優勢な将棋を粘って勝つ」タイプの棋士は昔なら少なからずいたが、現代将棋では、長期戦に持ち込もうとする手(決め手が見えずにそうした場合も同様だ)さえも形勢暗転の要因となる。決めるべきところは決めなければいけない、と、プロの将棋にも意識改革を起こさせたのは、藤井聡太の出現とAIによるシビアな評価値の影響が大きかった。

 永瀬拓矢王座の先勝のあとをうけた王座戦第2局は、実力者である永瀬が渾身の力で藤井聡太を上がりがかかるステージに引き摺り込んだ将棋だった。

 77手目。5筋の飛車と金の上に自ら▲5七歩と打った手がその強い意志の表れ。自らの駒が重くなっても、藤井聡太の飛を抑え込むのが急務と考え、直後に▲4五歩と角筋を通して、その働きを主張してそこだけで勝とうとした手だ。▲5七歩自体はお互いの飛の働きを悪くする手なので、必然的に上がりの時計はかかる。それによって藤井聡太の切れ味を削ごうとしたのだ。

 もちろん、AIはその手をしかめっ面で見つめて、辛口で評価した。寸前まで永瀬の勝率を54%としていたのに、瞬間的に51%に下げたのがそれ。とはいえ、永瀬ほどの強者が自分で誘導した長期的な勝利への道筋なので、藤井聡太としてもその対応は非常に難しかったはずだ。

 歩の連打で9七に呼んだ香を狙って△5三角と自陣角を打った手に対して、▲8九桂と貴重な持ち駒を投入したのも永瀬の強い意思表示だったが、この時点でついにAIの評価は《50-50》に。望み通りに上がりの時計がかかる展開にはなったが、藤井聡太はこれにも見事に対応して崩れなかった。

「最後、寄せにいく手順がちょっと分からなくて」

 秒読みの激闘が長く続き、140手ものやり取りを終えてようやく藤井聡太に形勢が傾いたが、勝負の決着は214手まで持ち越された。

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