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藤井聡太21歳「点数でという方針に…」“王座戦、生の対局直後姿”を見て思い出した渡辺明九段の「ずいぶんと大きくなりましたよ」
posted2023/09/14 17:00
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph by
Kyodo News
藤井聡太が14歳2カ月でのデビューからいきなり勝ちまくった(最終的に29連勝)とき、そのあまりの上がりの脚の速さに、数々の豪脚エピソードを刻んだオルフェーヴルをイメージした。史上最強の棋士を競走馬に例えるのは恐縮だが、ラストの3ハロンは常に32秒台(あくまでもイメージです)で飛んでくるところに魅かれた。元々、詰将棋の解答選手権における断トツの優勝者として聞こえてきた人らしく、寄せのスピードと正確さはまさに異次元だった。
もし“上がりがかかる”展開になったとしたら?
少しだけ気になったのは、上がりがかかる展開になったときはどうなんだろうという疑問だった。競馬の場合、馬場が極端に悪化したときや強風が吹いたときなどに、普段は最後の600mを34秒台で上がって来れる馬でも2秒や3秒は遅くなることがある。しかし、この要件は将棋には当てはまりそうにない。
もう一つは、たとえばレースの序盤から淀みのない速いペースで全体が流れたときだ。競馬の場合、前半が速くなったら後半はどうしたって遅くなる。強い負荷がかかって各々が体力を削られながら終盤を迎える形になると、ラストは残った体力を振り絞っての粘り合いの様相になる。そのときはオルフェーヴルほどの高い能力を持っている馬でも、本来の鋭い決め手が宝の持ち腐れになる可能性があるのだ。これは将棋にもあてはまるケースがありそうだ。
王座戦第2局は永瀬王座が渾身の力で…
しかし藤井聡太の場合は、これまではそういう展開にすらさせてこなかった。相手が意識的に粘り合い指向の泥沼のステージに引き摺り込もうとしても、その手さえも正確に咎めて、一気にリードを奪う力が彼にはあったのだ。