酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「栄冠は君に輝く」古関裕而が野球殿堂入りするまで…“慶応を生観戦”88歳名誉教授の記憶「“軍歌王”と言われたかもしれませんが」
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/08/26 17:00
決勝戦後の両校行進。大会歌「栄冠は君に輝く」が流れた
古関裕而は、郷土・福島の人々の熱烈な後押しもあって、野球殿堂入りしたが、日本野球の発展に貢献した文化人は古関以外にも数多い。
文化人で殿堂入りした人物は極めて少ない
しかし前述したとおり、野球殿堂は、野球人、経営者が中心で、文化人の殿堂入りは極めて少ない。
殿堂入りした順にあげると……。
太田茂(ジャーナリスト 1972年)
池田恒雄(ベースボール・マガジン社創業者 1989年)
正岡子規(俳人・歌人 2002年)
志村正順(NHKアナウンサー 2005年)
君島一郎(野球研究者 2009年)
佐山和夫(作家 2021年)
古関裕而(作曲家 2023年)
この7人だけ、ということになる。
「ドカベン」「あぶさん」で一世を風靡した漫画家・水島新司は、候補にはなったものの生前の段階で選出されなかった。「記録の神様」と言われたジャーナリスト宇佐美徹也も候補になったが1票が入っただけ。
また野球人ではあるが「プロ野球ニュース」のメインキャスターとしてプロ野球ファンの拡大に多年貢献した佐々木信也は、候補にすらなっていない。
野球文化學會総会の席上で池井氏に、慶応義塾大学の同窓である佐々木信也について聞くと「佐々木さんは、僕は現役時代の実績がないからというんですよ。でも彼がテレビの世界で果たした役割は本当に大きかったと思うんですけどね」と語った。
甲子園で慶応を観戦した池井教授の感想は…
アメリカではMLBの発展に寄与したアナウンサーなど放送人に「フォード・C・フリック賞」という賞を授与している。野球殿堂とは別だが、同じ「アメリカ野球殿堂」が選考し、発表している。
野球が日本に伝来して今年で151年。野球人と同列である必要はないだろうが、古関裕而以外にも、野球の発展に力を尽くし大きな功績があった文化人を何らかの形で顕彰すべきではないだろうか。
ちなみに、88歳になる池井氏も今夏の甲子園のアルプススタンドに駆け付け、慶応を応援した。
「いや、暑いのなんのって、たいへんでしたよ。でも『陸の王者慶應』の横断幕が直射日光を遮ってくれて、助かりましたよ」