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仙台育英“150キロトリオ”が打たれたワケは…? “優勝候補の大本命”でも予想外の「0.00001%」が起こる難しさ 「これが、甲子園ですよ」
posted2023/08/07 17:38
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
JIJI PRESS/Kiichi Matsumoto
0.00001%――。
仙台育英の須江航監督は開口一番、意味深長に数字を用いて甲子園初戦を総括した。
「こんな試合になるなんて、0.00001%も思っていませんでしたから。3対1とか3対2の接戦になるだろうと思っていましたので。甲子園はやはりすごいですね」
須江の想定を超えていた浦和学院との試合は、数字だけでもそうだと頷かされる。
スコアは19対9。仙台育英が19本、浦和学院が18本と両チーム合わせて37本ものヒットが入れ乱れる打撃戦となったのだ。
なにより予想外だったのは、仙台育英投手陣がそれだけ打ち込まれたことである。
仙台育英の超強力投手陣「150キロトリオ」
東北勢初の全国制覇を果たした昨年夏。仙台育英の原動力と呼ばれた「140キロクインテット」のうち、高橋煌稀、湯田統真、仁田陽翔の3人が残り、彼らは今年「150キロトリオ」として力を昇華させている。
絶対的な存在として迎えた宮城大会では、最も多い15回を投げた湯田が1失点、ともに5回を投げた高橋と仁田が無失点。3人とも盤石のパフォーマンスだった。そんな強固な布陣が、甲子園の初陣でいきなり猛攻を受けたのだ。
3回まで2安打、5奪三振で無失点。ストレートが150キロを計測するなど快調なマウンドさばきを披露していた先発の湯田のピッチングが激変したのは、4回だった。5本の短長打を浴び4失点。監督の須江をもってして「3年間でこんなに打たれたことがない」と言われる右腕は、突如乱れた原因をこう読み解いた。
「最初はストレートもスライダーもしっかりボールに指をかけて投げることができたんですけど、4回からはうまく力を伝えきれず相手に捉えられてしまいました」